2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370050
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
陳 捷 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (40318580)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 『古逸叢書』 / 黎庶昌 / 楊守敬 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治十年代に清国公使黎庶昌および公使館随員の楊守敬が東京で刊行した『古逸叢書』は、近代以降における中国古典籍の影印叢書の先駆的な存在であり、そのテキストは現在でも古典籍校勘・翻刻の際の底本や校本として利用されている。しかしながらその編纂・出版の過程、所収の各書の底本やテキストの性質について、十分に研究されてはいない。本研究は文献学の方法を用いてこれらの問題を考察し、その編纂・出版における日本人学者・印刷業者との交流、校訂作業の手法、編纂・校勘の際に使用された底本・校本、さらには刊刻・印刷の際の技術的な特徴などについて系統的に考察・分析を行い、その本文の性質を正確に把握し、この近代における古典籍研究史上の一大懸案の解明を目指すものである。
平成27年度は前年度の作業に続き、『古逸叢書』所収の各書のテキストの書誌調査を行い、そのテキストを、底本といわれるものや、他のテキストと校合し、本文の異同の分析を通して校訂作業の手法を分析し、当時使われていた底本・校本の解明を努めた。叢書本の他に、単行本・補修本などについての調査を行い、叢書本と単行本、初印本と補修本、後印本などの具体的な流布情況について検討した。前年度に引き続き中国国家図書館、北京大学図書館および日本国内の東京、名古屋、京都、大阪などにある図書館・文庫での文献調査を行い、一部の関連成果について、学会発表あるいは研究論文の形で発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はほぼ計画通り資料調査を行い、また、諸本の書誌調査・校合作業を進めてきた。また、明治時代の木版印刷技術の改良や写真術の利用などについも研究を進み、一定の成果を得ることができた。南京図書館、揚州印刷博物館および台北の国家図書館、台湾故宮博物院での文献調査は実施できなかったが、平成28年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において、『古逸叢書』所収の各書のテキストの校合作業を最終的に完成させ、底本・校本を解明すると同時に、『古逸叢書』全体の校勘方法および本文の性質を分析する。さらに、前年度に引き続いて『古逸叢書』の版木調査を行い、叢書本と単行本、初印本と補修本、後印本などとの調査結果と照合しながら、原刻・修版・補刻の版木を確認し、版木の状況から初印本と補修本、後印本との異同を分析する。また、現在までに確認したところでは、日本で印刷された初印本と中国で刷られた補修本・後印本とにおいては、紙、墨、摺印技術などにおいて明らかな違いが見られるため、版木と補修本および後印本の調査を行うことにより、単に本文の異同を調べるのみにとどまらない、上記のような当時の日中両国における木版技術の相違に関するより深い知見が得られるものと思われるのである。
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Causes of Carryover |
予定していた南京図書館、揚州印刷博物館および台北の国家図書館、台湾故宮博物院での文献調査については、先方の都合に合わなかったことで実施できなかったため、次年度使用額が生じた。それについて、平成28年度に行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年6月に台北の国家図書館、台湾故宮博物院での文献調査を予定しており、また、10月に南京図書館、揚州印刷博物館での調査を予定している。
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