2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370050
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
陳 捷 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (40318580)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 『古逸叢書』 / 近代日中文化交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治十年代に清国公使黎庶昌および公使館随員の楊守敬が東京で刊行した『古逸叢書』は、近代以降における中国古典籍の影印叢書の先駆的な存在であり、そのテキストは現在でも古典籍校勘・翻刻の際の底本や校本として利用されている。しかしながらその編纂・出版の過程、所収の各書の底本やテキストの性質について、十分に研究されてはいない。本研究は文献学の方法を用いてこれらの問題を考察し、その編纂・出版における日本人学者・印刷業者との交流、校訂作業の手法、編纂・校勘の際に使用された底本・校本、さらには刊刻・印刷の際の技術的な特徴などについて系統的に考察・分析を行い、その本文の性質を正確に把握し、この近代における古典籍研究史上の一大懸案の解明を目指すものである。 本年度は、前年度に引き続き、『古逸叢書』所収の各書のテキストの校合作業に努め、底本・校本を解明すると同時に、『古逸叢書』全体の校勘方法および本文の性質の分析を行った。また、日本で印刷された初印本と中国で刷られた補修本・後印本とを比較し、料紙、墨、摺印技術などの相異について調査を行った。これらの研究調査の成果の一部は「羅振玉旅日時期刊印日蔵漢籍事業概観」(「学人羅振玉研討会」、中国・旅順博物館、2016.10.19-20)、「和刻本的変種:流入中国的日本版片及其印本」(「東亜古代雕版印刷与版片国際学術研討会」、中国・揚州雕版印刷博物館、2016.10.21-26)、「十九世紀日蔵漢籍回流与広州」(「2016年古籍版本目録学国際学術会議」、中国・中山大学図書館、2016.11.8-9)、「関於十九世紀後半葉日蔵籍回流中国的商業渠道」(中央研究院近代史研究所、2016.12.5)などの日本内外においての学会発表・講演で発表し、また、現在論文を作成し、学術雑誌に投稿することを準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は所属機関主導の共同研究の代表を務めることになったことなど、当初予期していなかったことがあり、本研究にかけられる時間は短くなり、研究の遂行にある程度影響し、当初の計画はやむなく遅延することとなった。ただし、資料収集と一部の校勘作業は進んでおり、期間延長することによって完成させることは十分可能だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度において、『古逸叢書』所収の各書のテキストの校合作業を最終的に完成させ、平成28年度に完成できなかった版木調査を完成させ、版木の状況から初印本と補修本、後印本との異同を分析する予定である。また、今までの研究成果を論文としてまとめ、学術雑誌に投稿する形で国内外の学会に発信する予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度は所属機関主導の別の共同研究の研究代表を務め、多くの時間とエネルギーがとられてしまったため、本研究のための調査計画はすべて実行することができなかった。また、中国の学会で発表する予定であったが、先方の都合で会議が2017年に延期されたため、それに参加する旅費は未使用となっている。なお、研究成果を書籍として出版するための打合わせも2017年に回すことにしたため、旅費と滞在費の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度7月に延期された学会に参加し、研究成果を発表する予定である。また、研究成果は中国で出版する予定しているため、出版社の編集者との打合せが必要である。その際の旅費、滞在費として使用する予定である。
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