2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370051
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
後藤 敏文 国際仏教学大学院大学, その他の研究科, 教授 (40215497)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古インド・アーリヤ語 / サンスクリット / インド・ヨーロッパ語比較言語学 / ヴェーダ / アヴェスタ / 歴史文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は古インド・アーリヤ語(広義の「サンスクリット語」)の語形を,(1) 語根,語幹,接尾辞,語尾などに分節し,活用の組織と具体的姿,語形成の原理と機能を正確に分析把握し,(2) 古イラン諸語との比較を通じてインド・イラン祖語形を復元し,(3)インド・ヨーロッパ祖語からの展開次第が跡づけられる要素について,今日までに達成された知見を総動員して歴史的展開と形成原理とを検証し,歴史文法の観点から古インド・アーリヤ語形態論を著すことを目的としている。インド・ヨーロッパ語比較言語学,古イラン諸語文法,古インド・アーリヤ語文法の各分野に今日的水準に立った入門書,概説書が欠けているという現状から,さらに,音韻論,統語論,語彙,文献の性格理解などに亘る広い入門書の役割をも兼ねたものを目指す。 本年度は,Boppのサンスクリット文法出版200年記念学会(5月ドイツ Berlin, Jena),インド・イラン祭式儀礼文献研究会(6月ベルギー Liege),Hoffmann 没後10年追悼学会(11月ドイツ Erlangen)に招かれて発表し,インド・ヨーロッパ語学会の5年毎の大会とこれに引き続く動詞語根に関する研究会(9月オーストリア Wien)に参加し,積極的に議論に加わった。本年3月にはミュンヘン大学に留学中のPan氏が盛岡に滞在し,東京の学生一名を加えて,1ヶ月間ほぼ毎日ヴェーダ文献,アヴェスタ,古ペルシア語の研鑽に努めた。これらはいずれも本研究課題に直接関わる示唆や成果をもたらした。 この1年間,特に海外の研究者たちとの議論交流を通じて,より詳細な歴史文法の作成の必要性が意識された。特に,本来専門とする動詞研究の分野について,本報告者がこれまでに蓄積してきた資料,分析結果を今のうちにできるだけ発表しておく必要性を痛感し,残された動詞の章を新たな構想で著すべく決意した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主要部分は名詞グループ(名詞,数詞,代名詞,名詞複合語)と動詞グループ(定動詞語形,派生名詞・副詞形など)とから成る。これまでに,名詞に関する部分について著述を終えた。残された課題は動詞である。動詞部分については,信頼できる文法が書かれておらず,また,本報告者がその作成にこれまでの研究生活を懸けてきたということが問題を複雑にしている。過去に Hoffmann 教授とともに収集記録してきた動詞語形は厚いファイル16冊分になるが,文献に確認されるそれらの語形の中に,本研究に活かすべき語形,典拠が依然多数残されていることを,この一年の作業と海外交流とから改めて知らされた。そこで,資料集自体の公表は先になるが,重要な事項を選んで,本研究計画に反映させるべく努める。このため,動詞文法の作成に予定以上の時間が懸かることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き動詞部門の著述を行う。筆者の英語版 Morphology を骨格としながらも,より明確かつ親切な構成に組み替え,頁数が増えることを厭わず取り組む。動詞語形資料集から,重要な語形,典拠をできるだけ取り入れるよう,整備選択に努める。 適任者が漸く得られたので,これと平行して,中途で終わっている上述の基礎資料,動詞語形資料一覧のスキャンを進める。 昨年度は海外学会への参加に時間を取られたが,そこで得られた成果を基に,本年度は動詞部門を少しでも先へ進め,全体の完了を目指す。
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Causes of Carryover |
適切な人材が得られず,動詞語形一覧のスキャン,ファイル化が完成できなかった(謝金)。購入図書の選定に十分な時間が割けなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動詞語形一覧のスキャン,ファイル化を完成する(謝金)。
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