2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370059
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
福田 洋一 大谷大学, 文学部, 教授 (00181280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 尚敬 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (80712570)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チベット論理学 / カダム派 / プラマーナ・ヴィニシュチャヤ / KWIC検索 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、チベット論理学がどのような過程で形成されていったかを解明することを目標としつつ、その基礎研究を提供することに重点をおいている。初期のチベット論理学の文献は失われたと考えていたが、2002年にラサで大量に発見され、2008年以降、順次刊行されつつある。これらの文献は草書体で書かれた写本であり、略字や誤記が多数含まれ、印刷も不鮮明な箇所があり、読みづらい。また議論内容が、われわれに身近な後代のチベット論理学と大きく異なっているため、文脈を把握することも困難である。 これらを情報処理の手法を用いながら分析し、難解な初期チベット論理学文献の読解に資する基礎資料を作成することが本研究課題の当面の目標である。 平成26年度は、まず出発点となるべきテキストの入力を進め、それらに基づいてKWIC検索ができるプログラムを作成し公開を始めた。テキストは、大きなテキスト4つを新たに入力し5つめの途中まで済んでいる。既存の入力テキストも加えると、50フォーリオ以上のテキストの2/3程度の入力が済んでいる。 本研究課題の成果については、Webサイトを開設し、随時情報をアップしている。入力済みテキストの検索ページも公開している。 また個別的な研究として、研究代表者福田はインド論理学のチベット語訳のズレについて研究発表を行い、また研究分担者の石田はチベット語訳にしかないダルモッタラのアポーハ論、研究協力者の崔は初期チベット論理学における刹那滅論証の系統の分析を行い、研究発表と論文の投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初期チベット論理学研究のための基礎資料の作成という意味では、おおむね当初の予定通りに進行している。テキストの入力は当初一定程度行うことで、他の研究者からの情報交換による提供を期待したが、実際には極めて限られた分量しか入手できなかった。そのため、本研究課題の中でできる限り入力を進めることにした。幸い、入力の進捗状況はいいので、期間内に重要なテキストは全て入力できる見通しである。 当初予定のKWIC検索プログラムは十分に稼働しており、特定の用語を検索したときに各テキストの傾向や使用コンテキストを把握することができる。 しかし、一方で個々の概念の分析や、個々のテキストの読解という点では、難解な内容を解きほぐすには至っていない。全文の検索が可能であっても、個々の箇所の文脈を読み取る困難さは解消していないからである。そのため、単に単語の検索ではなく、文脈を含めた比較が必要となる。そのためには、各テキストの構造を示している科段を抽出整理し、同じ議論が他のテキストのどこに出現するかを検索できるようにすることが有効であると考えられる。 また、単語の検索は、その単語を知っていないとできないため、偶々思いついた単語のみを検索していては、データを十分に活用することが出来ない。そこで、チベット論理学書にどのような単語が使用されているかの一覧表化が必要となる。これらは必ずしも当初の研究計画の中に含まれていないが、研究の過程で新たに浮上してきた問題点として、本研究課題の目標を達成するために必要な作業であると考える。 以上を総合的に考えて、当初の計画に付随した新たな問題の解決を含めて、やや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度同様、チベット語写本や関連するチベット語論理学書の入力を進める。平成27年度中に、60フォーリオ以上の主要な著作の入力を終える予定である。 さらに平成27年度より、科段を抽出する作業を依頼する。また従来のデータで欠けている部分を探して補充入力をする。提供されたデータで不備なものは修正していく。昨年研究協力者として参加した崔境眞にこれらのアルバイトを依頼する。使用単語の抽出については、福田がその方法を考察し、プログラムを作成する。論理学書は語彙が限られているので、ある程度、使用語彙のリストが出来てくれば、そこに含まれない語彙を特定する作業は楽になっていく。現在、データベースに登録済みの語彙を丸括弧に囲んで表示するプログラムが出来ているので、これをもとに、より効率的な語彙抽出の作業ができるようにする。 これらの情報については、まとまった文献の分が出来上がった都度、プロジェクトのWebサイトで公開していく。 内容に関する分析については、入力したテキストのうち、注釈文献ではない独立の論理学書について、その構成を比較する研究を予定している。また、かねてよりチベット論理学独自の概念と考えられる「異なりldog pa」および「概念─定義─述定対象(mtshan mtshon gzhi gsum)」、複数のサンスクリット語が同じ一つのチベット語に訳されたことによって、やや変質したチベット論理学の用語「結合関係('brel ba)」などについての考察を行う。以上は、平成27年度中に論文を執筆(または投稿準備)をしたいと考えている。石田は、ダルモッタラの『量決択註』についての研究を進める。 またツァンナクパの『量決択』注の解読を行い、最初の部分から訳注を発表する。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究事業のうち、入力作業の依頼の準備に時間がかかり、入力作業が秋以降になった。また、当初外国旅費を二人分考えていたが、研究発表の計画変更に伴い、当該科研費による出張が一人となった。以上の理由により、年度内での調整を行ったものの、次年度への繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、年度当初からアルバイトの作業の依頼をすることができる。また前年度の作業データに対して科段を抜き出したり、一部欠けている部分の入力、誤入力の多いテキストの修正など、仕事の種類が増え、依頼内容も複雑になり、アルバイトを依頼する者も増えるので、平成26年度の繰越金は平成27年度中に使用することができる。仕事の進展によっては、平成28年度の予算の前倒し要求も考える。
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Research Products
(15 results)