2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370065
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
深澤 英隆 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30208912)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ジンメル / 宗教学 / 宗教哲学 / 宗教社会学 / 宗教性 / 宗教概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、まずジンメルの宗教関連著作・論考全体の読解と分析を主軸として、研究を進めた。とりわけ新カント派から生の哲学への推移のなかで、ジンメルの宗教論がいかなる一貫性をもち、同時にまたいかなる変容を遂げたかを見届けることに重きをおいた。この結果、ジンメルの宗教関連著作の全体を貫くいくつかのモチーフ、とりわけ宗教的アプリオリと社会的相互行為との結合という視点や、「生の宗教」ともよぶべきその宗教的ヴィジョンの存在を確認するとともに、それらに対し各時代において、その時代の文化・宗教状況ともからみつつさまざまな修正を加えられたことが判明した。 また、ジンメルの宗教論成立の前提として、18世紀末のシュライアマハーの宗教論の存在が極めて重要であることを確認し、両者の影響関係の解明に力を注いだ。具体的な成果として、シュライアマハーの宗教論については、論考「宗教経験論と脱文脈化―シュライアマハーの『宗教について』をめぐって」において詳しく論じた。またシュライアマハーの宗教的時代診断とジンメルのそれとを比較考察し、前者から後者への影響や両者の共通性を解明するとともに、他方で両者の差異を論じ、100年の時代を経て時代の先端的宗教理解がどのような変容を遂げたかを見届けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の最優先課題とした、ジンメルの宗教関連の全著作・論考の読解と分析については、概ね達成したものと言うことができる。ジンメル宗教論の内容の詳細な分析はなお完成をみていないが、ジンメル宗教論の全体的特徴と時代的変遷の概要については、概ね把握するに至った。また並行して進めていた、ジンメルの宗教関連テクストの翻訳については、その全体の下訳が7割方完成した。すでに出版社との交渉も進捗をみており、翻訳の完成後、時を経ずして刊行される予定となっている。このほか、研究の実績の概要でのべた諸課題に関わる文献資料については、これを広範に収集した。 またジンメル宗教論を時代のコンテクストにおいて考察する作業については、これを18世紀末のロマン派宗教論にまで遡及して追跡した。このため、ジンメル宗教論とジンメルの同時代の宗教状況や思想状況との関連についての考察に当初予定したよりも多少の遅れが出ているのは、遺憾とするところである。他方でジンメルとシュライアマハーとの影響関係に関わる研究内容について、平成26年度中に2点の論文として刊行できたことは、当初の予定を超えた成果であったと言うことができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、引き続き19世紀末前後の宗教状況に関わる資料を収集するとともに、その解読を一層進め、この時代の宗教状況、ことにキリスト教会の動向と非キリスト教宗教(とりわけジンメルとも深い関わりのある「知識人宗教」)の動向を解明し、ジンメルの時代診断論的な宗教理解と照合しつつ、同時代の宗教状況の文脈のもとでのジンメル理解を得る。これについては、平成27年8月の世界宗教史学会で研究発表を行う。 また、近代以来の宗教思想の文脈、同時代の宗教哲学および宗教社会学、宗教心理学など、宗教諸学の文脈に照らしてみたジンメルの特異性と時代的共通性について考察を進める。とりわけ新カント派や現象学派との共通性と差異、ヴェーバーの意味理解的社会学との対立性などが重要な論点となる。 さらに、ビーフェルト大学に設置された「ジンメル・アルヒーフ」を訪問し、ジンメルの遺稿資料や講義録などに、本研究にとって有益な資料が残されていないかを探るとともに、ジンメル研究者との研究交流を図る。また引き続き、海外のジンメル研究者との研究交流の機会をもつ。 以上すべての作業を通じて、ジンメル宗教論の内的論理と主題連関について、全体的かつ総合的な見取り図を描いて行く。加えてジンメルの宗教関連論考を全訳し、刊行する。また研究成果については、日本宗教学会、日本社会学会等の機関誌に投稿するとともに、これらの学会で研究発表を行う。
|
Causes of Carryover |
予定していた資料の購入に変更があったため、5,019円の端数が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度予算とあわせて、資料購入にあてる。
|