2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370065
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
深澤 英隆 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30208912)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジンメル / 宗教哲学 / 宗教言説 / 近代宗教 / 知識人宗教 / 宗教社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、引き続きジンメルの宗教関連著作・論考全体の読解と分析を主軸として、研究を進めた。また、とりわけジンメルの時代の宗教状況、ことにキリスト教会の動向と非キリスト教宗教の概要をあらためて検討し、そうした文脈の中でジンメルが占める位置、またこうした状況にジンメルがどう対処したかを考察した。特に注目したのは、ジンメルとも深い関わりのある「知識人宗教」の動向であり、ジンメルの時代診断論的な宗教理解と照合しつつ、同時代の宗教状況の文脈の中でのジンメル理解を試みた。ジンメルは同時代の知識人を担い手とした宗教群に対して極めて批判的であったが、そうした一方で、ジンメル自身がメタ宗教論的立場に立ちながら、なお宗教的ヴィジョンを積極的に提示すること、その際、知的な論証を通じて「無媒介」的で「直接」的な宗教性を究極概念として喚起するなど、ジンメルと当時の知識人宗教との共通性が浮かびあがった。これらの点は、「ゲオルク・ジンメルと知識人宗教のパラドクス」と題して、平成27年8月の世界宗教史学会で研究発表を行った。また平成27年11月に台北市の中央研究院中國文哲研究所で行われた学会では、「近現代における宗教言説の展開――宗教のポリティックスとポエティックス再考」と題する発表を行い、ジンメルを含め近現代の宗教言説の持つ諸特徴を論じた。 以上に加えて平成27年度には、ジンメルの宗教論関連の論考すべての邦訳を終えた。これについては現在最終的点検の段階に至っており、平成28年度中の刊行が見込まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の最優先課題とした、ジンメルの宗教関連の全著作・論考の内容の詳細な分析は、ほぼこれを終えたと言うことができる。 また並行して進めていた、ジンメルの宗教関連テクストの翻訳については、その全体の下訳を完成させた。すでに出版社との交渉もなされており、平成28年度内には刊行される予定となっている。このほか、研究実績の概要でのべた諸課題に関わる文献資料については、ベルリン国立図書館でこれを広範に収集した。 また平成26年度以来の課題であった、ジンメル宗教論を時代のコンテクストにおいて考察する作業については、特に同時代の知識人宗教運動との関連に着目してこれを行った。この点については研究の一定の進捗を見、二つの学会発表においてその内容を発表することができたのは、大きな成果であったと考えられる。 こうした一方で、ジンメルの全業績、とりわけ社会学および生の哲学に関わる業績とジンメルの宗教論との関連の解明ということには、なお十分に着手されていない状況であり、これが今後の課題となるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、研究の最終年度として、ジンメル宗教論の内在的分析を最終的に完成させるとともに、これまで考察を進めてきた近代ドイツ宗教思想史・宗教運動史の文脈におけるジンメル宗教論の位置づけを総括的に解明する。またこれまでは十分に取り組まずにいた、ジンメルの社会学思想や哲学思想と宗教思想との関連についてより分析を進めて、ジンメル宗教思想の全体像を明らかにすることを試みる。 またジンメル宗教論集の訳稿を完成させ、刊行する。訳稿の完成に先立って、ドイツのボッフム大学を訪問し、ジンメル研究者との討議を通じて、ジンメル解釈および訳出についての助言を仰ぐ予定である。また邦訳には、ジンメル宗教論を包括的に論じた論考を付す予定である。 以上の研究成果については、日本宗教学会等の学会で研究発表を行い、また論考としてまとめることを目指す。
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