2015 Fiscal Year Research-status Report
近世日本における暦学の展開と暦の流通に関する宗教社会史的研究
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26370070
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
林 淳 愛知学院大学, 文学部, 教授 (90156456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 正彦 天理大学, 人間学部, 教授 (00309519)
梅田 千尋 京都女子大学, 文学部, 准教授 (90596199)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 陰陽道 / 陰陽師 / 梵暦 / 暦学 / 暦占 / 土御門家 / 太陽暦 |
Outline of Annual Research Achievements |
林は、ハイデルベルク大学で神仏習合のシンポジウム(5月28日)に招待され、そこで近世の暦に見られる神仏習合の話をおこなった。また尾張旭市に招待されて、「日本人と暦」についての講演をおこなった(8月7日)。そこでは明治改暦にもかかわらず、旧暦の習慣が残っていることの意味を解説した。10月3・4日に鹿児島県の黎明館、尚古集成館で薩摩暦を閲覧し、鹿児島県立図書館では、そこに所蔵されている薩摩暦4冊を撮影することができた。また薩摩暦の伝来については、学芸員から話をうかがうことができた。11月22日には京都において林と梅田が会い、お互いの成果を話し合い、情報交換をおこなった。明治期の暦の成立と変遷を専門とする下山育世をまじえた研究会(3月20日)を東洋大学で開催し、近世から近代への暦流通の変遷について議論をおこなった。その間、林、梅田は、谷川家文書、鳥海家文書の検討を継続している。 岡田は、継続的に国立国会図書館にある渡辺敏夫寄贈本の調査をおこなった。また大阪近辺の梵暦関係寺院の調査をも実施した。また文献調査によって、梵暦が明治20年代・30年代に活発化する事実をつきとめることができた。岡田は、梵暦運動の歴史を「梵暦運動史の研究」という論文にまとめた。 梅田は、陰陽道の研究者を集めた会合を開くため事務局を担当し、3月19日に大東文化大学の施設をつかって陰陽道史研究会を開催した。林もそれに参加した。また梅田は、暦占いとしての生活文化への影響、暦・方位に関する禁忌への対応、中世から近世、近世から近代にかけての変容に着目した研究をすすめてきた。また近世の暦占書の分析と、祭文という観点から陰陽道祭祀の儀礼の分析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、林、梅田は名田庄村暦会館所蔵の谷川家文書、千倉町鳥海家文書の分析をおこない、岡田は梵暦の資料収集をおこなった。岡田は、『須弥山儀図解』を購入して、その資料的価値を検討した。林は、下村育世の協力を得て、鹿児島県立図書館所蔵の薩摩暦の撮影、解読をおこなうことができた。薩摩藩は、幕府、土御門家とつながりながらも独自に暦学者を養成し、中国の影響をうけた独自の薩摩暦を作ったことが知られているが、薩摩の暦学者については、解明はこれからである。薩摩の天文館(明時館)について研究文献を探したが、わずかな解説を除き見つけることはできなかった。また林は、渋川春海に関する研究文献を収集して、かつて自らが作成した渋川春海年譜の改訂版を準備をしている。梅田は、近世の村落社会において陰陽師がいかなる身分的な存在として認知され、ある時には差別の対象になるのかを、「身分制社会のなかの民間宗教者」という論文で解明している。梅田は、現在、陰陽道祭祀を祭文を手掛かりに分析し、論文を公表する予定である。暦や陰陽五行が、どのように神格化されて視覚化されるのかを、奥三河の花祭りの調査などを通じて検討している。さらに三人で協力して、地方の暦、暦学者の基礎的な研究を深めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、近世の暦の流通と暦学の展開を解明するものであるが、太陽暦が採用される近代において、どのように受け継がれ、あるいは否定されたのかを考えることも大切である。太陰太陽暦から太陽暦への移行は、日本だけではなく、中国文化圏では普遍的におこった事態であったが、「旧暦」がもっていた民衆の生活や意識のなかで位置づけと機能を明らかにすることは必要である。また薩摩藩、仙台藩、加賀藩の暦学者が、どのような役割を果たしたか、どのような道具を使っていたかを少しでも明らかにしたい。国立国会図書館の渡辺敏夫寄贈本の調査は、岡田が始めたが、林、梅田も加わり、その全体像を解明する作業をおこなう予定である。渋川春海の研究は、没後300年を記念して、『科学史研究』で特集が組まれて、新たな見解も出されている。そこでは林、梅田の研究も参照されているが、その特集論文の成果を踏まえて、渋川春海の研究を前進させる必要がある。古代暦学の専門家である細井浩志を招いて研究会を開く予定にしている。
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Causes of Carryover |
研究分担者である岡田が、当初計画していた東北大学狩野文庫の調査をできなかったこと、研究会をもっと頻繁におこなう予定であったが、2回しかできなかったことによる。また梵暦関係の資料が購入できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、東北大学狩野文庫の調査をおこない、頻繁に研究会を開催する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 日本人と暦2015
Author(s)
林淳
Organizer
尾張旭市高齢者教室講話
Place of Presentation
尾張旭市中央会館(尾張旭市)
Year and Date
2015-08-07 – 2015-08-07
Invited
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