2016 Fiscal Year Annual Research Report
Skeptical modernity: pluralism, scientification and original justice
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26370079
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (30207980)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会思想史 / 科学史 / ニュートン / モダニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の2点を解明するとともに、全体の総括を行った。 (5)文明の災厄の縮減(6)進化と文明の装置 (5)については、電子文献データ・ベースを利用しつつ、ルソーやフランス革命等を参照しつつ、ギボン、ケイムズ、ロバートスン、スミスなどの18世紀の文明論の射程を検討した。その結果、以下の点が明らかになった。18世紀の人間と社会の科学は、社会の法則性を明らかにできなかったが、個人の生活圏の視線に根差し、禍々しい文明の在り方を縮減する規範的な理論を提起し、文明内の生活世界に残る原初的正義の感覚を指示して、以後の民主主義や社会主義のような社会改革への方向性を示すことともなった。またそれは工業化以後の社会を展望する視野を持っていた。 (6)については、ヘーゲルからフォイエルバッハ、シュティルナー、マルクスに至るヘーゲル派の展開および19世紀思想史との関連を検討した。その結果、以下の点が明らかになった。啓蒙の社会理論に対して19世紀にはヘーゲル派の批判が対置され、進化論が登場した。それらは明示的にはならなかったが、18世紀の「人間と社会の科学」が看過した「文明」の装置の可視化の可能性を秘めていた。だが20世紀後半の進化の理論の科学的確立と、プリューラリズムの再生以前だったため、十分な展開をみなかった。 以上によって、啓蒙」の社会観と社会科学の射程を、その限界と、原初的正義という工業化以後への展望という、現代に託された正負の遺産の両面からとぱえる展望を拓くことができた。それは同時に、プリューラリズムと懐疑主義という、西洋近代思想と非西洋的な文化的・思想的伝統の通底部分を示しつつ、知の科学化という、西洋近代思想がモダニティの原型を提供する固有の要因を合わせて明示する可能性につながる。
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