2016 Fiscal Year Annual Research Report
Self-portrait and Theatricality: Claude Cahun's Encounter with the Avant-garde Theatre
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26370097
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Research Institution | Osaka University of Arts |
Principal Investigator |
長野 順子 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (20172546)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フランス前衛劇 / 演劇の再演劇化 / 文化の編み合わせ / 仮面 / 人形 / カーニヴァル空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
シュルレアリストの女性写真家・作家として近年注目されているクロード・カーンの領域横断的な活動を「演劇性」及び「カーニヴァル空間」という観点から捉え直すことをめざして、以下の調査・研究を進め、研究成果を発表した。 1)パリで前衛芸術運動が高まった1920年代にカーンとパートナーのムーアが関わった前衛劇を中心に、フランス国立図書館他にて調査を進めた。また西洋の前衛劇と東洋の様式化された伝統舞踊・演劇との双方向的な関係について、文献研究及び資料調査を(演劇博物館や人形博物館にて)行った。 2)カーンの生地ナント市の市立図書館(メディアテーク)における「クロード・カーン:写真・デッサン・著作」展を観て、同時開催の講演会に参加した。またナント大学のメディア・アート専門のアラン准教授と、シュルレアリスムとカーンの関係に関する研究及び日本でのシュルレアリスム研究について情報交換をした。 3)日仏美術学会、関西シュルレアリスム研究会(平成28年度)でカーンの写真・演劇活動について口頭発表を行い、また神戸大学文学部紀要『美学芸術学論集』、大阪芸術大学紀要『藝術39』(平成28年度)に関連する論考を掲載した。 4)平成28年度には、現在改修中のナント市美術館(2017年6月再開館予定)及びメディアテークに所蔵されているカーンの主要作品と諸資料を再調査し、各担当者と日本でのカーン展開催の可能性について話し合った。現在、2018/9年の開催をめざして準備を進めている。 カーンは20世紀初頭のフランスで女性・ユダヤ人・性的少数者という立場から、「人形」や「仮面」という意匠を用いて人間の「自己同一性」そのものを問い直した。彼女のこのような写真的/演劇的パフォーマンスは、21世紀に入り宗教的・民族的・ジェンダー的な多様性をいかに共存させていくかという問題を抱える現代社会にとって、少なからぬ示唆を与えるはずである。
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Research Products
(2 results)