2016 Fiscal Year Research-status Report
南洋群島における沖縄の人々による音楽芸能の展開と現地住民との交流の実態
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26370101
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
小西 潤子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (70332690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 南洋群島 / 沖縄 / 音楽芸能 / 移民 / ミクロネシア / 行進踊り |
Outline of Annual Research Achievements |
文献調査により、沖縄県立図書館で手稿「南嶌」に日本統治時代の南洋群島で流行していた民謡の歌詞を見出した。これと松岡静雄『ミクロネシア民族誌』『中央カロリン語の研究』掲載の歌詞を比較し、論文としてまとめた。 情報収集としては、5月に太平洋芸術祭に参加し、沖縄の旧南洋移民と現地の人々との芸能交流の貴重な資料となるSiis環礁のグループによる新作の行進踊りを収集した。8月には、NNNドキュメンタリー番組のパラオ取材に同行し、沖縄系パラオ人金城文子氏、アントニーナ・アントニオ氏らから、沖縄からの移民とパラオ人との交流について情報を得た。同番組は10月に放映され、坂田ドキュメンタリー賞を受賞した。3月には、ヤップで同様の調査を行った後、パラオを再訪して番組の現地還元を行った。 1月には、映像人類学者R. Cox(英国・グラナダセンター)らと別の調査目的で来沖した平松幸三(京都大学名誉教授)より、戦前サイパンの沖縄出身南洋移民のライフヒストリーについて示唆を得た。また、9月、1月に別の調査目的でハワイ島を訪問し、10月に沖縄県で世界ウチナーンチュ大会が開催されたこともあり、広く沖縄県系人らの連合会と交流する機会を持てた。これにより、同時代のミクロネシアへの移民の音楽文化との違いが明らかになった。 成果発表としては、太平洋芸術祭(グアム)と連動して5/18-21開催された太平洋歴史会議における口頭発表をはじめ、最終年度(H29)に予定していた国際小島嶼文化会議についても、同会議主導者である P. ヘイワード教授(シドニー工科大学他)の来日に伴い、1年前倒しするかたちで、6月に申請者主催により沖縄県立芸術大学で開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧南洋群島の音楽芸能には、沖縄の痕跡が残っていないが、パラオ、ヤップ、サイパンのインフォーマントから、彼ら自身の解釈によってその理由を引き出すことができた。数は限られるものの、文献資料から当時の沖縄の人々と現地の人々との交流の実態を示す歌とそのヴァリアンテを見出し、比較分析した結果を論文にまとめることができた。また、沖縄県内での聞き取りや情報収集に基づいて、南洋から伝わった行進踊りの様式比較を行い、論文を作成した(印刷中)。これらにおいて十分検討できなかった点については補足調査を行い、情報を得る予定である。 沖縄県内の対象地域(栄野比地区)では観月祭そのものが中止されたが、沖縄本島民俗芸能祭(国立劇場おきなわ)での上演を見ることができた。また、太平洋芸術祭では今日のミクロネシアにおける音楽芸能が数多く上演された。この記録は、沖縄に伝わった音楽芸能との様式分析のための資料となりうる。 さらに、旧南洋群島地域の例ではないが、ウチナーンチュ大会や別の目的で訪問したハワイ島で沖縄県系人らと交流し彼らの文化的アイデンティティの一端を伺えた。これにより、移民と文化という大きなテーマから調査対象をとらえる視点を得られた。成果発表については、そのいくつかを前倒しで行うことで参加者からのコメントを得ることが出来、最終年度(H29)に向けての課題が明確になった。 以上により、平成28年度研究実施計画で立てていた①沖縄県内文献調査、②聞き取り調査、③旧南洋群島聞き取り調査、④成果中間発表という4つの項目について、それぞれおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(H29)は、当初研究実施計画に基づき、①沖縄県内文献および聞き取りの補足的調査、②情報整理、③分析考察、④旧南洋群島聞き取り調査、⑤情報整理、⑥分析考察、⑦成果発表の7つの項目を立てて、研究を推進する。旧南洋群島聞き取り調査については、これまでの情報整理、分析考察結果を踏まえて、対象地域や実施時期の設定を検討している。
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Research Products
(6 results)