2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370102
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
高瀬 澄子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (60304565)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本音楽史 / 楽律学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、『楽書要録』の伝本に関する研究を重点的に行った。 『楽書要録』とは、7世紀末頃、唐の則天武后の命によって編纂された全10巻の音楽理論書である。天平7年(735)、入唐留学生の吉備真備によって、律管や暦書などとともに、日本の朝廷へ献上された。このとき献上された律管は、記録に残る限り、日本へ渡来した最初の律管である。『楽書要録』全10巻のうち、現存する巻第五から第七までの3巻は、主に音律について論じている。『楽書要録』と律管は、密接に関連するものとして渡来し、献上されたことは明らかである。 『楽書要録』の伝本としては、これまで、7点の写本と3種の版本があることが知られていた。しかし、本研究により、京都大学文学研究科図書館の所蔵する『弁音声』(写本、1冊)は、これまで知られていなかった『楽書要録』の新たな伝本であることが判明した。 『弁音声』の書写者と書写年は不明であるが、江戸時代の漢学者、藤森弘庵(1799-1862)の蔵書印が押されている。他の伝本と同様、『楽書要録』巻第五から第七までの3巻を書き写したものであるが、『楽書要録』以外に『管絃音義』(1185)と『体源鈔』(1512)の一部も含まれる。『楽書要録』の本文については、明らかな構成上の誤りが認められる。本文に対するいくつかの書き込みについては、他の伝本との相違点と共通点とが認められ、そのうち巻第七および巻第六の図に対する書き込みに関しては、京都市立芸術大学所蔵本の祖本と林述斎編纂本との中間に位置すると推測される。 研究の成果は、第11届中日音楽比較国際学術検討会(2015年11月9日、新疆芸術学院)において「『楽書要録』の新たな伝本―京都大学所蔵『弁音声』について―」として口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、(1)日本における律管の現存状況の調査、(2)日本の律管に関する文献の探索と収集、を行う予定であった。(1)については、ほとんど進展しなかった。(2)については、『楽書要録』を除いて、ほとんど進展しなかった。(1)(2)とも、その理由は、『楽書要録』の新たな伝本を発見したため、その研究に集中したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究計画であった、(1)日本における律管の現存状況の調査、(2)日本の律管に関する文献の探索と収集、を引き続き行うとともに、次年度の研究計画である、(3)日本の律管に関する文献の読解、を同時に行う。(1)(2)(3)とも、日本の律管の中で重要な位置を占める恩徳院の律管に焦点を絞り、重点的に調査したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、律管の現存状況の調査が進展していないからである。現地での調査を行っていないため、旅費を使用せず、また、関連する資料を収集しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
恩徳院の律管を中心として、関連する資料を収集し、現地調査を行いたい。
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Research Products
(1 results)