2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370102
|
Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
高瀬 澄子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (60304565)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 日本音楽史 / 楽律学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29(2017)年度は、(1)石川県立美術館所蔵「蒔絵脇息図十二律箱」(伝五十嵐道甫、17世紀)と恩徳院の律管「年次」との関係、(2)「年次」以外の恩徳院の律管の所在および関連文献について調査した。 (1)については、前年度の調査により、石川県立美術館所蔵「蒔絵脇息図十二律箱」には、律管・四穴・書状が附属していること、『楽家録』(安倍季尚撰、1690)に記された律管「年次」(詮芸・豊原敦秋作、1412)と何らかの関係がある可能性があることが判明していた。そこで、2017年5月1日、石川県立美術館の許可を得て、研究協力者の前島美保氏とともに、「蒔絵脇息図十二律箱」およびその附属品を実見した。その結果、次のようなことが明らかとなった。1)附属の律管は「年次」ではない。2)附属の文書は、加賀藩士の竹田市三郎(1658没)が生嶋玄蕃に宛てたものであり、「年次」について言及しているが、『楽家録』の記載内容とは一致せず、その真偽は不明である。3)「蒔絵脇息図十二律箱」は、前田育徳会の伝来品ではなく、石川県立美術館が昭和56(1981)年度に古美術商より購入したものである。 (2)については、旧蔵者等への聞き取り調査や、京都大学附属図書館所蔵『本朝律管抄』(写本、12冊)の閲覧を行った。しかし、有意の情報を得るには至らなかった。 (1)の成果は、高瀬澄子・前島美保「律管「年次」に関する調査報告」として、第12回日中音楽比較研究国際学術会議(2017年9月15日、上海音楽学院)および東洋音楽学会東日本支部第100回定例研究会(2017年12月2日、東京大学)において口頭発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29(2017)年度は最終年度に当たり、研究の総括を行う予定であった。しかし、律管の現存状況の調査は予想以上に難航し、総括するには至っていない。理由としては、時間の経過等により、律管旧蔵者のその後の状況を知る手掛かりが少なくなっていることが挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況の遅れのため、当初の研究期間の1年間延長を申請し、承認された。 次年度は、(1)恩徳院の律管のうち、所在の手掛かりが残る律管の調査、(2)恩徳院以外の律管のうち、所在が明らかな律管の調査、(3)製作や所蔵の記録がある律管についての総括、(4)律管の製作や伝存の背景についての総括を行いたい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、実地調査を行うつもりであった恩徳院の律管の所在が確認できなかったこと、台風による欠航のため参加予定であった国際学会に参加できなかったこと、等による。 今後の研究の推進方策に従い、律管の調査のための旅費や謝金、調査を裏付ける資料の購入、および研究成果の発表のための旅費や謝金に使用したい。
|
Remarks |
学会発表2件は同内容である。第12回日中音楽比較研究国際学術会議は、台風による欠航のため研究代表者が参加できず、研究協力者が発表した。東洋音楽学会東日本支部第100回定例研究会は、学会に事情を説明した上で、研究協力者が同席して、研究代表者が発表した。
|