2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370108
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
GILLAN Matthew 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (50468550)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 声 / 身体 / 琉球音楽 / 民族音楽学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は琉球列島で伝承される音楽における「声意識」(voice consciousness)を考察し、音源、文献、又は演奏者とのインタビューを通して、その発声法の社会的な意味を明らかにすることを目的としている。26年度の研究調査では、3回とも沖縄での調査を行った(8月、11月、3月)。調査内容は次の3要素を中心に行った: 1) 琉球古典音楽の吟法。20世紀前半に出版された琉球古典音楽に関する文献には、「発声」や「吟法」に関する記述が多く見られ、これらの理論の多くは演奏者の身体を基にしている。しかし、これらの多くは、現在の演奏者による解釈には統一性がなく、それは発声法や歌い方が変化したからだと思われる。古典音楽の発声法を明らかにするため、現在の演奏者とのインタビューを行い、さらの現在と20世紀前半の音源をスペクトログラムで分析し、比較した。 2)組踊の唱えの発声法:沖縄の古典演劇である組踊には様式化された唱えのパターンがあり、役柄によってがその唱えが異なっていることが一般的に認識されている。唱えにおける発声法、細かい旋律の動きや抑揚など、音楽学的な視点からの研究は未だにないので、26年度に組踊の役者とのインタビューを行い、さらに沖縄県立芸術大学などに保管されている1960年以降のビデオ映像を収集し、分析を行った。 3)声の伝承。沖縄の歌三線(いわゆる古典音楽も民謡を含む)において、発声法や声の音色がどのように認識され、伝承され、または変容してきたのかを考察した。主なデータとして、26年度には、現在活躍している演奏者、ブロードキャスターやプロデューサーとのインタビューを行い、それを文字おこしした。およそ20時間のインタビュー内容を分析し、27年度6月、7月で発表する予定である。 4)8月に石垣島でのアンガマ行事を取材し、さらに参加者とのインタビューを行った。本年度以降の裏声の考察の一部にする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は概ね順調に進展している。一年目の目的は研究調査であり、8月、11月、3月に行った沖縄県での調査では大量のデータを収集するができた。それぞれの調査は順調に行き、これらのインフォーマントには本年度にも訪ね、確認や助言をしてもらう予定である。8月に沖縄国際大学で研究報告をし、同大学の研究者に助言や指摘をしてもらった。また、11月に東洋音楽学会では、組踊の唱えについて学会発表をした。発表内容をさらに進展し、本年度中に学会誌に提出する予定である。また、(3)の声の伝承の調査は、本年度の6月に沖縄文化協会(沖縄県)での喉頭発表、また東京沖縄県人会の研究会で発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究調査は次のとおり計画している: 1) 声と信仰:26年度8月に取材した八重山地域で旧盆に行われるアンガマでは、帰ってきた祖先の声として裏声が使用されることをインタビューであきらかにした。また、琉球列島の祭祀音楽における声:先行研究では、琉球列島の祭祀音楽での発声法についての記述が幾つか存在する。福山(2005年)は奄美で裏声がさかんに使用されていることは、シャーマン的な儀式と深く関連していると指摘している。また、内田順子の宮古島の神歌の研究では、行事の進行によって声が震えたり、大きくまたは小さくなったり、全体のピッチが変わったりする現象を記録している(2000:141-147)。27年度8月、11月に沖縄や奄美を訪ね、聞き取り調査でこれらの先行研究をさらに発達させる目的である。また、宮古への調査は28年度に計画している。 2) 沖縄芝居の発声法:26年度の調査で組踊の唱えの調査では、琉球言語と発声法の相互関係の重要性が明らかになった。琉球大学に琉球言語で上演される「沖縄芝居」の音源資料の存在がわかり、現在は使用許可を申請中である。また、芝居役者や地謡とのインタビューを計画している。
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Causes of Carryover |
26年に購入する予定であったパソコンは購入しなかったので、27年度に購入する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり、パソコン購入に充てる予定。
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