2016 Fiscal Year Research-status Report
メーイ(1519-94)の芸術理論:音楽理論とアリストテレース『詩学』解釈の融合
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26370109
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
津上 英輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (80197657)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メーイ,ジローラモ / Mei, Girolamo / アリストテレース『詩学』 / プトレマイオス『調和論』 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の研究では,前年度の成果である「メーイのプトレマイオス旋法論解釈」(2016年1月,『成城文芸』233・234号,pp. 97-124)に基づき,メーイにおけるギリシャ音楽理論の解釈と彼の音楽観,そして彼の古代悲劇観の関係を分析した.その結果,これら三者が緊密に結びつき,彼独特の美学思想を形成していることが確かめられた.その成果は論文「記述理論から規範美学へ:メーイの旋法体系と古代音楽像」(2016年7月,『美学』248号pp. 109-120)および2017年3月20日,第20回国際音楽学会での口頭発表“Girolamo Mei Projecting the Image of Ancient Music in the Light of Aristotle’s Theory of Tragedy and Ptolemy’s System of Tonoi”(IMS 2017 会場:東京)で公表した. また,1560年のメーイ筆手紙に出現する彼の芸術分類が,西洋における芸術概念の確立者と目されるバトゥに200年近く先立つものであることを,2016年7月26日,第20回国際美学会大会(ICA 2016会場:ソウル)において,“Two Centuries Ahead of Batteux: Girolamo Mei’s System of the Arts”として口頭発表した. それと並行して,現存最古のオペラ『エウリディーチェ』(1600)において作曲家ペーリが採用したいわゆるレチタティーヴォ様式の理論的源泉がメーイであるとするパリスカの見解を再検討し,そうでないことを,手書きを含む12の文書から立証し,論文「話す人を歌で摸倣する:メーイの古代悲劇像とペーリのレチタティーヴォ理論」(2016年3月,『美学美術史論集』21号,pp. 1-24)として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文「記述理論から規範美学へ:メーイの旋法体系と古代音楽像」(2016年7月,『美学』248号pp. 109-120)および2017年3月20日,第20回国際音楽学会での口頭発表“Girolamo Mei Projecting the Image of Ancient Music in the Light of Aristotle’s Theory of Tragedy and Ptolemy’s System of Tonoi”(IMS 2017 会場:東京)が,本研究における結論部分に相当するので,研究目的はおおむね達成されたと考えている. しかしミラーノのアンブロジアーナ図書館所蔵のメーイ関係文書が未読である(図書館の都合により,複製が入手できなかった)ので,完全に達成されたとは言えず,「おおむね順調」とする次第である.
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Strategy for Future Research Activity |
まずアンブロジアーナ図書館所蔵のメーイ著作De nomi delle corde del monochordo写本(Ms. R. 100 sup.)の電子複写を入手し,イーストマン音楽学校Sibley Music Library本(こちらは私が電子複写を依頼したものが,すでにネット上に公開されている)と比較し,後者の欠を補う. その結果を踏まえて,直接にはペーリのレチタティーヴォ理論の源泉に関する論文に必要な修正を加える.最終的にはその成果を,現在準備中の英語著作Girolamo Mei’s Aesthetics of Music(仮題)に盛り込む所存である.
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Causes of Carryover |
Biblioteca Ambrosiana(イタリア,ミラーノ)所蔵の手書き資料が,図書館側の都合で複製できず,メーイ関係の1つの文書が入手できなかったので,複製ができるようになるまで待つ必要が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度,複製サービス再開を待って,上記図書館に当該資料を注文し,本研究計画を完成させる.
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Research Products
(5 results)