2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370114
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中野 正昭 明治大学, 文学部, その他 (40409727)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本演劇史 / 芸能史 / 大衆文化 / 日本映画史 / 喜劇・軽演劇 / ミュージカル・レヴュー / 舞台娯楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き浅草軽演劇の「カジノ・フォーリー」、そして本年度より新たに「プペ・ダンサント」の資料調査を行った。28公演の演目とノート類を新たに確認することが出来た。しかし幾つかの機関ではプログラムの所蔵は確認できたものの、複写の体制が整っておらず、時間の都合もあり次年度以降の再調査へ回さざるを得なかった。プログラム以外の主な新資料としては、コメディアン鈴木桂介が戦前・戦中の古川緑波一座在籍時代の思い出を綴ったノート1冊を入手し、内容の分析を行った。これまで鈴木の文章は、雑誌等への寄稿を含めて、非常に少なく、本資料は昭和期軽演劇の傍証としてだけでなく、鈴木桂介の人柄を知る上で貴重なものである。今後、翻刻と検証作業を進めていく予定だ。 また2016年3月には「NHK番組アーカイヴ学術利用トライアル」2016年度第1期採択研究「映像資料による興行街浅草と大衆芸能・演劇の表象に関する研究」(代表:細井尚子)の研究分担者となり、放送資料(テレビ、ラジオ)による調査を並行して行った。劇場中継・舞台中継やインタビュー等の資料から、榎本健一と浅草興行街が高度経済成長期にあって〈旧きよき昭和〉の名残をつたえるものとして歴史化されていく過程を具体的に検証することができた。これは研究期間が3ヶ月間と短く、放送資料を用いた研究をどのように本研究課題に加えていくかが今後の検討課題となった。 本年度は研究実績として、編・共著『ステージ・ショウの時代』(近代日本演劇の記憶と文化3、森話社)を発行、編集の他に総論と各論の執筆を行った。この本は、少女歌劇、レヴュー、軽演劇を中心とした日本近代の舞台娯楽とその海外との影響関係を〈ステージ・ショウ〉の視点から論じたもので、国内での大衆文化の発展と国際的同時代性をひとつに収めたところに研究の特徴が出せるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、資料調査・収集・聞き書き・検証等のいずれもほぼ研究計画通りに進んでいる。 ただし、一部機関で複写が不許可だったり困難な場合があり、プログラムや台本を全て手作業で筆記するか、当該機関と相談してデジタル化等の方向性で資料公開を進めるかが今後の新たな検討課題として残った。また資料翻刻について、翻刻した資料のページ数が大部に及ぶため学術誌での発表が難しく、複数回・複数年に分けて掲載するか、webを含めた別の発表方法を選ぶかという問題が生じた。著作権等を考慮の上、次年度以降の検討課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、諸機関での関連資料の所蔵調査、関係者への聞き書きをつうじた上演情報の体系的な収集・検証・分析を中心に進めていく。 また「NHK番組アーカイヴ学術利用トライアル」2016年度第1期採択研究「映像資料による興行街浅草と大衆芸能・演劇の表象に関する研究」(代表:細井尚子)の研究分担者となったことで、暫定的な放送資料の公開ながらも、本研究課題にとって有意義な貴重な資料の存在を複数確認することができた。放送資料はラジオ、テレビ共に現存する資料の殆どが1960年代後半以降であり、放送局が体系的に保存を開始したのが1980年代以降であるため、本研究課題では必ずしも研究対象に含めていなかった。しかし放送局側でのアーカイヴ化と学術公開が進んでいることに応じ、今後は、本研究課題の研究計画に大幅な変更をきたさない範囲での「NHK番組アーカイヴ学術利用トライアル」への再応募など、放送資料の積極的な利用・検証・分析を行う他に、本研究課題終了後にそれらの資料を用いた発展的な研究課題への継続が可能となるように努めることにする。
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Causes of Carryover |
資料購入に際して年数回の大規模な古典籍の入札会があり、その入札額が予定金額より下回り6,357円の次年度使用額が生じた。資料収集に関しては、古典籍・古書の専門店や入札会に頼らざるを得ない部分があるが、今後も入札については古書店と連絡を密にして研究費に過不足が生じないように努める。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の資料購入で全額使用する。
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