2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370114
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中野 正昭 明治大学, 文学部, 兼任講師 (40409727)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 演劇学 / 日本近代演劇 / 軽演劇 / 大衆演劇・芸能 / 大衆文化 / 比較演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き諸機関での軽演劇関連資料の所蔵調査とその精査を主に行った。この結果、ある機関で昭和4(1929)年に浅草公園水族館に開場したカジノ・フォーリーの初期公演資料の発見・所蔵確認ができたものの、人員・収蔵庫の不備、閲覧・複写体制が整っていない等の理由から、現物資料にあたっての充分な調査が出来ない事例があった。また機関によっては資料情報の誤りがみられ、その都度修正を行った。 この他の本年度の主な研究実績としては、軽演劇作家・水守三郎(本名・水盛源一郎)関連資料のうち学生時代に参加した築地小劇場関連で学会発表を行い、商業演劇関係者にしばしば見られる新劇から大衆演劇(軽演劇)へという演劇活動と価値観の変遷を検証・問題提起したこと、太平洋戦争期の軽演劇の状勢を知る上で重要な九州博多地区について集中的な調査を行い、国際シンポジウムで発表、論文執筆を行ったことが上げられる。研究成果の社会還元・情報発信としては、海外書籍やオペラ関連キーワード集での軽演劇等関連項目の執筆を行った。 海外研究者との連携・情報交換という点では、台湾の研究者との東アジア大衆演劇の共同研究によって、戦時期のムーラン・ルージュ新宿座の文芸部に台湾留学生の林摶秋が在籍したこと、台湾帰国後の林が近現代演劇と映画の分野でパイオニア的役割を担う重要人物となったことが新たに判明した。これまで日本では林摶秋の存在は知られておらず、戦後のムーラン・ルージュ新宿座経営に携わった台湾華僑・林以文と合わせ、今後の日台間での軽演劇及び大衆演劇の共同研究の新たな課題を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、資料調査・収集・聞き書き・検証等のいずれもほぼ研究計画通りに進んでいる。特に所蔵状況の調査については、当初研究計画で予定した機関での所蔵調査はほぼ完了した。 しかし、これまでも検討課題だった一部機関での台本やプログラムの複写が不許可だったり、困難な場合の手作業による筆記の時間的不充分さが、本年度も解決できないまま残った。結果として演目、配役、梗概などの基本情報の収集とデータベース化は、所蔵調査の進捗に比して満足とは言い難いものがある。 また研究三年目で本研究課題がある程度周知されたためか、古書店や個人から資料の購入希望、諸機関への寄贈の斡旋・紹介の依頼が数件あった。研究課題の遂行と資料の散逸を防ぐ目的から、その都度、予算が許す範囲内での購入し、それが難しい場合は適当な機関への購入依頼や寄贈斡旋・紹介を行った。しかし、その件数と金額が、本研究課題の予算や諸機関の購入予算を上回ることもあり、次年度での予算調整や継続的な研究課題申請の必要性が感じられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究計画の最終年度ということもあり、従来の所蔵調査に加えて、所蔵調査済みの資料の手作業による資料筆記、そのデータベース化、研究成果発表に力を入れて進めることにする。 筆記による資料情報の収集は、時間的・予算的問題があることなので、年度の後半は過去の研究成果のとりまとめと並行して、新規の研究助成への申請や、今後の科研への継続的な申請を視野に入れた研究方策を柔軟に進めることにする。
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Causes of Carryover |
年度末に開催される大規模な古書展用に資料購入費に余裕を持たせた結果、13,132円の次年度使用額が生じた。今後は古書店等と連携を深めることで事前情報の取得に力を入れるなどし、可能な限り次年度使用額が発生しないように努めたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
13,132円の次年度使用額については、次年度の資料購入費、複写代など当初の研究計画の遂行に不可欠な費目で使用するものとする。
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