2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370119
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 寛 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (40431879)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 錯覚 / 感性 / ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、錯覚(イリュージョン)の概念を美学史的に再検討し、そこから現代の文化的・社会的要請に応えうるような「錯覚の感性哲学」を打ち立てることを目的とする。 初年度である平成26年度には、本研究課題の歴史的・思想的アウトラインを構築した。 まず「錯覚(illusion)」と「遊戯(ludus)」の語源的つながりに着目し、デジタルゲームの中に錯覚と同型の構造を探求した。その結果、不確定性、反復性、二重意識性という三つの要素が両者に共通する、という仮説を得た。そしてこれによって、エルンスト・ゴンブリッチの認知科学的美術研究の蓄積を、現代のバーチャルリアリティの領域へと接続する準備ができた。この成果は「錯覚としてのゲーム」という題のもと、アルバータ大学(カナダ)の学会「Replaying Japan 2014: 2nd International Japan Game Studies Conference」で報告された。 次に、とくに聴覚と触覚の歴史的関係に焦点を当てて、錯覚のマルチモーダリティの研究を進めた。聴覚の原理を「接触」に見るか、「震動」に見るかで、近代の感覚論は大きく変転してきたが、錯覚という観点を導入することで、この問題がいっそうクリアーに理解できることが明らかになった。その成果は、東京大学(東京)の表象文化論学会第9回大会のシンポジウム「接触の表象文化論──直接性の表象とモダニティ」での口頭報告「接触から震動へ──〈響き〉としての内面性の誕生」で公表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はおおむね順調に進展している。 初年度に予定した、哲学史上の錯覚の位置付けについて、近年の心理学や生理学分野での研究動向も視野に入れながら明らかにするという目標は、考察事例を幾つか変更した上で、達成できた。具体的には、月の錯視とアリストテレスの錯覚の代わりに、モリノー問題と共通感覚を取り上げた(口頭発表「接触から震動へ」)。これは第二年度の研究計画を先取りするものである。 また錯覚とゲームの構造を比較することで、現代の文化的事象にも応用可能な美的原理を見出すことができた(口頭発表「錯覚としてのゲーム」)。これは当初は最終年度に計画していた応用的課題だが、デジタルゲームを主題とする学会への参加を機会として時期を早めて着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も当初の研究計画通りに推進される。 すなわち、前年度に構築した歴史的・思想的アウトラインを踏まえ、「錯覚の感性哲学」の理論的中核を導き出すことができると予想される哲学的問題群を、心理学や精神医学、脳科学の研究動向も参照しつつ詳細に検証する。 その際とくに注目するのが、共通感覚とモリノー問題である。前者を通じて錯覚と「健常な知覚」との今日的境界を問い直し、後者を通じて錯覚という現象を知覚の文化的・社会的コード化の問題へと広げて考察する予定である。
|
-
-
-
-
-
[Presentation] Meta-Framing Evolution of Digital Game2014
Author(s)
YOSHIDA, Hiroshi
Organizer
International Conference: “Catastrophes, Digital Public Spheres and the Future of Democracy: 7th Annual Conference of the Rewriting Modern and Contemporary Japanese Intellectual History Project
Place of Presentation
ZMPT der Friedrich-Alexander-Universitat Erlangen-Nurnberg, Erlangen, Germany
Year and Date
2014-09-13
Invited
-
[Presentation] Game as Illusion2014
Author(s)
YOSHIDA, Hiroshi
Organizer
Replaying Japan 2014: 2nd International Japan Game Studies Conference
Place of Presentation
University of Alberta, Edmonton, Canada
Year and Date
2014-08-21
-
-