2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370119
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 寛 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (40431879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 錯覚 / 感性 / メディア / ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、錯覚(イリュージョン)の概念を美学史的に再検討し、そこから現代の文化的・社会的要請に応えうるような「錯覚の感性哲学」を打ち立てることを目的とする。 第二年度である平成27年度には、デジタルメディアとバーチャルリアリティ環境におけるイリュージョンについて、とりわけ視覚と聴覚の結び付きに着目して研究を行った。まず、ビデオゲームにおいては、音と音楽が認知的作用を伴っていることを明らかにした。すなわち、ゲームにおける音と音楽は、環境情報を知覚させ、プレイヤーに行為の手がかりを与える役割を担っていることが分かった。これは映画やアニメーションなどの映像音楽(効果音やBGM)とは本質的に違った役割である。ゲーム音楽との共通点と相違が浮き彫りになった。その研究成果は「ビデオゲームにおける認知的サウンド(Epistemic Sound in Video Games)」という題目のもと、ロンドン大学ゴールドスミス校で報告された。 また、ゲームのプレイヤー経験においては五感(とくに視覚、聴覚、触覚)の関係や結び付きによって特定のイリュージョンが生み出されていることを明らかにした。その研究成果は「ビデオゲームの美学(Aesthetics of Video Games)」という題目のもと、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院で報告された。 さらに、ゲームとメディアアートを比較対照するなかで、デジタルメディアとバーチャルリアリティ環境におけるイリュージョンの位相を明らかにした。その研究成果は「デジタルメディアにおけるゲームとその境界事例(Game and Its Borders in Digital Media)」という題目のもと、マドリード(スペイン)のメディアラボ・プラドで報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はおおむね順調に進展している。 とくにヨーロッパ(とくにイギリス)での調査、研究および研究成果発表を積極的に行ったことで、現代のメディア環境と技術の実態に即した、イリュージョン概念の応用的研究を進めることができた。 その結果として、当初は最終年度に計画していた課題である、デジタルメディアとバーチャルリアリティ環境におけるイリュージョンの位相についても、すでにかなりの程度、取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も当初の研究計画通りに推進される。 すなわち、初年度に構築した歴史的・思想的アウトライン、第二年度に取り組んだデジタルメディアとバーチャルリアリティ環境におけるイリュージョンの研究を踏まえて、最終年度である次年度には「錯覚の感性哲学」の体系を提示し、現代の日常生活や文化の中でイリュージョンが果たしている役割と意義を、「虚構」や「想像力」といった美学的諸概念も導入して検討する。そしてそれを通じて、美学=感性学をバーチャルリアリティ研究や認知インターフェース研究へと接続することが目標とされる。
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Causes of Carryover |
国外での研究期間が長期(一年間)に渡ったため、当初計画していた物品(書籍など)の購入や日本国内でのプロジェクトの推進(国内旅費や謝金などの執行)に一部、変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度、計画していた物品(書籍など)を購入し、日本国内でのプロジェクトを当初計画通りに遂行し、その中で次年度使用額を執行する。
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