2016 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental Studies on the Aesthetics of Illusion
Project/Area Number |
26370119
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 寛 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (40431879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 錯覚 / イリュージョン / デジタルゲーム / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「錯覚(イリュージョン)の感性哲学の基盤構築」は、錯覚(イリュージョン)の概念を美学史的に再検討し、そこから現代の文化的・社会的要請に応えうるような「錯覚の感性哲学」を打ち立てることを目的とするものである。同課題は、三年の研究期間を通じて、主として、絵画や音楽といった伝統的芸術文化を対象とする研究、デジタルゲームやアニメーションなど現代的なエンターテイメントやポピュラーカルチャーを対象とする研究、イリュージョンを人間特有の知覚特性としてポジティブに捉え直す理論的研究という、三つの大きな軸に沿って進められた。 第一の軸については、古代の遠近法から近代の映画やアニメーション、そして現在のMP3やバーチャルリアリティに至るまで、芸術の技法やメディアは、人間の目や耳がいかに「騙されやすい」かを織り込んで進化してきたことが明らかになった。第二の軸については、「錯覚(illusion)」と「遊戯(ludus)」の語の語源的むすびつきを探究し、不確定性、反復性、二重意識性という三つの要素が、錯覚とデジタルゲームの両者に共通することを明らかにした。第三の軸については、とくに視覚と聴覚と触覚の歴史的関係に焦点を当てながら、錯覚のマルチモーダリティの研究を行った。そしてそれを通して、認知科学的な芸術研究の蓄積を現代のバーチャルリアリティの領域に接続した。 本研究課題は、バーチャルリアリティ(仮想現実)やオーグメンテッドリアリティ(拡張現実)の普及によって現実感(リアリティ)のあり方が根本から問いなおされている時代において要請されている、錯覚を文化的・社会的に再定位するための感性哲学を打ち立てた。
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