2018 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of a Method for Judging Artistic Value of the Works by the Creators with Disabilities
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26370121
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
服部 正 甲南大学, 文学部, 准教授 (40712419)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 障害者芸術 / アウトサイダー・アート / アール・ブリュット |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年の第55回ヴェネチア・ビエンナーレに招待出品された澤田真一氏の作品を中心的事例として調査と研究を進めてきた。今年度も4回にわたり第二栗東なかよし作業所を訪問して調査を行った。澤田氏の作品は、内面から湧き上がる創作意欲によって他者の影響を受けることなく独創的な創作を行うという「アウトサイダー・アート/アール・ブリュット」の一般的なイメージとは大きく異なり、同じアトリエで創作する他の作り手の影響を色濃く反映し、様式が大きく変化している。本研究を通じて、障がい者の作品を「アウトサイダー・アート/アール・ブリュット」という既存の美術批評の枠組みでとらえることは、多様な障がい者の創作活動を過度に単純化し、特定のイメージの中に閉じ込めてしまうなど、多くの問題を含んでいることが明らかになった。 澤田真一氏の近年の作品の様式的変化については、焼成前の作品も含めて、多くのデータを収集することができたが、その公開に対しては細心の注意を払う必要がある。今やアウトサイダー・アートの代表的作家として、澤田氏の作品は美術市場において最新作を含む一定数の作品が販売されており、その複雑な権利関係などを整理して作品の一次的情報を公開することは容易ではない。障がい者の創作は、単純に「作家/画廊/収集家」という既存の美術批評的手法では処理できない問題を含む事案なのである。 一方、本研究の調査過程で、同じく「アウトサイダー・アート/アール・ブリュット」を代表する作家である小幡正雄氏の千点を超える遺作を調査する機会を得た。こちらは権利関係の整理も行ったうえで、収集データを公開し、調査の過程を報告する論文も公開した。また、戦後間もない時期の日本の障がい者の創作活動を考えるうえで極めて重要な資料である社会福祉法人椎の木会落穂寮に残された作品群の調査と整理を行い、情報を公開したことも本研究の大きな成果である。
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Research Products
(4 results)