2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370126
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴈野 佳世子 東京大学, 史料編纂所, 研究員 (40570065)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 絵美 (京都絵美) 東京藝術大学, 美術研究科, 講師 (40633441)
吉田 直人 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 保存科学研究室長 (80370998)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 日本画 / 復元 / 美術史 / 文化財保存学 / 文化財科学 / 博物館学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に引き続き、復元事例に関する基礎調査と資料の収集を進めた。特に初年度に十分な調査を実施できなかった、商業や観光資源的な要素の強い復元事例およびデジタル復元の事例について概要と現状課題の把握に努めた。人の手による復元模写と、CGによるデジタル復元では制作目的や完成した復元の用途が異なる場合が多いが、精度については互いの長所・利点を組み合わせることでより原本の形態に忠実な復元が可能となることを再確認した。絵画材料の質感や量感、色彩の復元についてもアナログとデジタルの折衷手法は有効と考えられ、最先端の復元研究現場では着実に技術革新が進められていることが実感できた。デジタル復元に関しては技術者に取材を行い、特に線描のトレース方法について研究報告としてまとめた。 また、今年度は実技系研究者が主導して日本絵画の材料に関するワークショップを開催し、復元に携わる研究者のネットワーク作り、教育普及に取り組んだ。美術史や文化財科学など学術系の若手研究者や学生を対象とし、特に色料と金属材料の特性および使用方法について実演を交えた解説を行った。ワークショップ参加者には印象に残っている復元事例や今後復元を望む絵画作品についてのアンケートを行ったが、源氏物語絵巻や紅白梅図屏風など、テレビ番組等で話題となった復元事例への注目度が高い結果となった。なお、ワークショップの内容と成果については2016年6月の文化財保存修復学会ポスター発表により報告する予定である。他分野の専門的技術を体験する機会としてこうしたワークショップはシリーズ化したいと考えており、最終年度には科学調査や史料の利用に関するワークショップ開催を計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は代表者の出産・育児に関わる都合で遠方での取材・調査を行うことが難しく、資料収集と分析および東京でのワークショップ開催を軸に研究を進めた。ワークショップには復元制作に携わる機関や大学関係者の参加が多くあり、会場で交流を深めることができたため、改めて現地取材の申請やシンポジウムの共催提案を行うことができた。学会発表等で本研究の認知度も高まっており、研究全体はおおむね順調に進展したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、取材やワークショップ開催を通して絵画をはじめとする文化財の復元に関わる研究者との交流を広げることができた。最終年度にはこうした研究者に登壇を呼びかけ、新たな研究分野としての「文化財復元学」を提唱するシンポジウム開催を計画している。 また、美術史研究者の協力を得て、ポジフィルムや紙焼きの画像資料、絵画作品調書等のデジタルアーカイブによる研究者間での共有を進め、復元研究への利活用を試みたいと考えている。 三年間の研究成果は論文としてまとめ、所属学会誌等に投稿する予定である。
|
Causes of Carryover |
文化財の科学調査に関するワークショップ開催のため、企画を担当する予定だった研究分担者の分担金に予算を計上していたが、講師のスケジュール調整の都合により開催を次年度に順延した。そのため分担金を次年度に繰り越して使用する必要が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年12月頃に光学調査に関するワークショップ開催を予定している。その際の会場費、通信費、機材運搬費、教材作成費等として使用する計画である。
|