2015 Fiscal Year Research-status Report
文雅の交―江戸時代後期大坂における大名・豪商・文人のネットワーク
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26370130
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高松 良幸 静岡大学, 情報学部, 教授 (40310669)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本・東洋美術史 / パトロン文化 / 食野一統 / 西村孟清 / 松平定信 / 楽翁画帖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大名と大坂豪商の「文雅の交」に関して、1.食野家一統と八州軒に関する研究、2.柳沢伊信と西村孟清の交流に関する研究、3.「楽翁画帖」(平野美術館)の調査研究、という具体的な3つの事例を中心に検証するものである。 27年度の研究実績は以下のとおりである。 1に関しては、前年度に引き続き食野家一統ならびに八州軒に関する文献調査を行い、関連資料の収集に努めた。また、食野一統の唐金家から大坂の豪商辰巳屋久左衛門家の養嗣子となった和田隆侯と松平定信の写実的真景図の制作を介した交流についての論考を執筆した。 2に関しても、前年度に引き続き柳沢伊信の日記のうち公刊されている『宴遊日記』『松鶴日記』から美術関係、西村孟清との交友関係等に関する資料の抽出を行うとともに、未公刊の日記のほか、関連資料に関する調査研究を実施した。また、西村孟清が主人であった商家「袴屋仁右衛門」に関する文献調査を実施した。併せて、西村孟清と親交があった頼春水らが編纂した『与楽園叢書』(広島市立中央図書館浅野文庫)の調査に着手し、頼春水ら広島の儒者・文人と大坂の豪商・文人らとの交流を伝える文献資料の収集、整理を行った。 3に関しては、前年度実施した「楽翁画帖」全194図の調査調査成果に基づき、作品の概要、松平定信の制作意図などに関する論考を執筆した。なお、当年度この論考の中で存在の可能性を指摘した松平定信が全国各地の儒者・文人の書跡を蒐集したと推定される作品が発見された。「楽翁法帖」と仮称しているこの作品は、「楽翁画帖」同様平野美術館に収蔵されたため、その作品調査も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1については、和田隆侯の事跡に関する論文の執筆・公表を行い一定の成果を示すことができたものの、研究の主眼の一つである八州軒に関する調査は未だ中途段階にある。 2については一定の出張期間を要する現地調査の一部を実施することができたが、来年度追加的な調査が必要である。 3については、調査研究に関して十分な進捗を図ることができ、その成果を活用して、平成27年度初頭には展覧会の開催に漕ぎ着けることができた。またこの作品に関する論文の執筆、公表を行った。また関連作品の新発見があり、それに関する調査も概ね進めることができた。 上記を総合して、「おおむね順調」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに実施できなかった1、2に関する現地調査を実施し、研究計画に沿った資料の収集、整理を図るとともに、その取りまとめをあわせて実施する。 あわせて、1、2、3の各分野に関して収集、整理してきた各種資料データベース化を推進し、それに基づいた考察を進めるとともに、研究成果に関する論文の執筆、ホームページ等での公表の作業に取り組んでいく予定である。 平成28年度は研究期間最終年度にあたり、これらの成果を研究成果報告書に取りまとめて行く。
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Research Products
(3 results)