2014 Fiscal Year Research-status Report
プッサン晩年の風景画における語りと寓意に関する総合的研究
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26370131
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
栗田 秀法 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (10367675)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニコラ・プッサン / 風景画 / ナタリス・コメス / 神話学 / 自然学 / 寓意的解釈 / カンパネッラ |
Outline of Annual Research Achievements |
プッサンの晩年の風景画、《ポリュフェモスのいる風景》《バッコスの誕生》《盲目のオリオン》などでは、ナタリス・コメスの『神話学』(1551)がいくつかの作品の典拠として指摘されてきたが、単なる典拠との照合性ではなく、むしろいかなる共通のトポスがあるのかの視座から研究を進めた。 コメスの『神話学』をその全体構想か捉えてみると、神話を歴史的、自然学的、倫理的の三つのレベルで解釈を行っており、古代神話の寓意的解釈の伝統上にあることがわかる。この時期のプッサンは自然学的解釈に関心を寄せていることが看取され、このことは1648-51年頃の「英雄的風景画」では神話や歴史が倫理的に捉えられていたことと好対照をなすことが明らかになったことは今後の研究にとって重要な成果であるといえる。 プッサンのそれまでの画業では倫理学と「知恵」の問題が大きな役割を果たしていたが、晩年では自然学と「知恵」の問題が重要であることから、西欧近世における科学史的な問題圏域とも交差する可能性が出てくる。実際ベーコンは『古代人の知恵』においてコメスの『神話学』を読み独自の応答をしたことが知られており、広く当時の「文芸共和国」における自然学のアレゴリー的解釈の意義を捉え返すことで、プッサンの晩年の風景画のトポスの理解と作品研究が進むことがより具体的に期待されるようになってきた。数十年前にブラントによって提起されたカンパネッラの思想との関連性の指摘にも新たな眼差し向けることができるようになるのではなかろうか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の海外調査は次年度初頭にパリでプッサンの重要な展覧会が行われることがわかったのでその際に延期することにしたが、資料収集・整理についてはかなり進めることができた。また、ナタリス・コメスの『神話学』の構想に注目することで問題の所在が一層明快になった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度前半にパリで「プッサンと神」展の実地調査及び資料収集を行う。また前半に本研究課題に関わる学会発表を行う予定であり、その後も機会を見て研究成果を公開していきたい。 最終年度には海外研究者を招聘しての研究交流会を行う予定であるが、今年度は人選が固まったので、次年度は内容を詰めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度初頭に研究課題に関わる重要な展覧会がパリで行われることが判明したため、本年度の海外調査を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度初頭の海外調査費として使用する予定。
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Research Products
(1 results)