2014 Fiscal Year Research-status Report
絵画史料と地理情報による大名庭園大崎苑の復元表示と近世都市景観の検証
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26370138
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
関口 敦仁 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (10336646)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大名庭園 / 松平不昧 / 大崎苑 / 近世都市景観 / 地理情報 / 茶室 / 庭園文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では近世大名庭園のうち、松江藩主松平不昧が御殿山の西側地域に拝領された下屋敷に造成した大崎苑に着目し、復元可能な絵画史料や図面の調査やそれらの3DCGによる復元と、それらを実スケール、実ポジション、実時間で表示可能なシステムも開発し、近世大名庭園遺産の景観評価を行うことを目指している。 平成26年度の主な調査の一つとしては、新たな絵画資料調査に研究協力者と松江を訪れ調査を行った。 松江では新たに邸内茶室群のスケッチの写本と国会図書館所蔵の写本の原本と思われる画の所蔵も確認され、それらの撮影と分析を行った。特に細かなディテールの描写がされており、建築素材や植栽についてのCG復元研究の参考とした。また、近世、近代の地図や国土地理院の地理情報データを元に目黒川流域の近世地形を分析し、下流域両岸の台地を含めた3DCGモデルによる復元を行った。庭園復元としては、大崎下屋敷の指図をもとに、庭園内茶室の3Dモデル復元を行った。 近世都市景観の評価のためには、植栽、河川流域の生活状況、他の大名庭園の景観、丹沢山系、富士山などの遠景などより多くの状況の復元モデル化が必要であるが、該当年度の復元モデル制作としてはほぼ予定通りの研究の進捗を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度の研究は、研究計画の4つのプロセスのうち、「1,絵画史料の実物調査と分析」、「2,調査分析から3次元復元モデルの制作」を始めて、今年度への目処をつけさせることであった。「1,絵画史料の実物調査と分析」について、現存する絵画資料等の調査、データの収集は松江等への美術館、図書館、資料館を訪れた。また、都内の国会図書館、品川区歴史館、品川区立図書館、都立中央図書館などを訪れ、近代の地域調査や地図、または写真など、ほぼ資料収集を終了することができた。とくに、松江での各所への調査において新たに得た資料群については、建築ディテールをよりよく表す資料で、「2,調査分析から3次元復元モデルの制作」研究プロセスに大きく役立った。また、地理情報データと明治初期の地図による、地形CGモデルの作成を行い、対象となる目黒川河口流域の近世地形を完成させ、地域景観についての視点からの検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は本研究の計画方法で示した4つの研究プロセスがすべて開始進行する予定である。それぞれの研究プロセスについて、今年度の研究内容を示す。前期中には「1,絵画史料の実物調査と分析」のうち、他藩の大名庭園の庭園画を参照し、調査周辺景観が描かれて田舎などの調査をおこない終了させる。後期から「4、庭園文化からみた近世都市景観評価」として、研究該当地の植栽の状況の再現作業を調査収集した絵画資料を元に、年内を目処に終了させ、調査対象地域の各所からの景観状況の比較検討を開始する。これらの作業と並行して、「2,調査分析から3次元復元モデルの制作」で形成された3Dモデルを表示用モデルとして表示システムの仕様に反映させながら、「3,リアルタイム表示システムの開発」を年度後半期から開始する。年度内には表示システムの簡易版として実行可能な状態にまで開発を行う。 以上の研究をスムーズに進め、最終年度の28年度には、期間の早い段階で現地での表示実験と景観評価の研究を行い、それらを元に学会等での発表につなげていく。
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Causes of Carryover |
データ量の多い3Dモデル作成補助のための、消耗品のソフトウェアーやメモリ増設について、今後のデータ量増加に鑑みて、適切な購入をおこなうために、見合わせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度のPCによる3D加工データの容量の増加とその作業に伴う表示スピードに支障がないかなどの状況を見て、消耗品の利用を考える。とくにその場合には増設メモリやソフトウェアープラグインの導入を計画する。
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