2017 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the transformation of nirvana image in China
Project/Area Number |
26370140
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
村松 哲文 駒澤大学, 仏教学部, 教授 (30339725)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 涅槃 / 涅槃図像 / 儒教 / 仰向け / 中国 / 儀礼 / 礼記 / 死 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、中国における涅槃図像のうち、特に仰向けの姿勢に表現した涅槃像について着目した。本研究の全体的な研究構想は、中国の涅槃像が仰向けから右脇を下にした姿勢に変化する過程の究明にある。その推論が仏教でいう「涅槃」の解釈の進展と捉え、その時期を6世紀後半頃と推測した。そして右脇を下にした涅槃図像が如何なる地域的な展開していくのか考察することが課題として残されている。このような研究を進めていく中で、経典に書かれている「右脇を下」にした涅槃像を、あえて「仰向け」にした理由について着目して、本年度はその考察を試みた。 本研究を進めていくうちに気付きはじめたことが、「涅槃」という概念が中国に伝来する前、伝統的な中国では人の死をどのように捉えたのかということである。そこで本年度は、特に儒教関連の文献、『儀礼』『礼記』などを精査し、古代中国の人々の死の理解を考究した。 その結果、中国では死を厳粛な現象と理解し、喪の過ごし方など厳密に定められていることが理解できた。また死者の扱い、その処理の方法なども興味深い知見を得ることができた。特に方位を意識していることも留意したい点であった。死者の安置につていは「正尸」とあり、姿勢について詳細にしていないが、特に記さないということであれば、それは「仰向け」という理解が自然であると推測した。また頭の向きついて、竹内照夫氏の『礼記』の解説によれば、窓下に南首、北窓に東首と説明されており、涅槃図像の頭の位置がが向かって左だけではなく、右に向けられていることの理解にも示唆を与えてくれる高説であると考えた。つまり、死というものを仏教的な解釈である「涅槃」ではなく、いわゆる儒教的な解釈をした際に、「仰向けの涅槃図像」を成立させたのではないかと考えたのである。
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