2014 Fiscal Year Research-status Report
伊勢物語絵の体系構築に向けた近世作品の研究ー住吉如慶筆「伊勢物語絵巻」を中心にー
Project/Area Number |
26370144
|
Research Institution | Osaka University of Arts |
Principal Investigator |
河田 昌之 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (20712061)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 紀子 羽衣国際大学, 現代社会学部, 教授 (30212955)
山本 登朗 関西大学, 文学部, 教授 (40210538)
田中 まき 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (50299088)
徳原 賜鶴子(青木賜鶴子) 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60180139)
赤澤 真理 同志社女子大学, 生活科学部, 助教 (60509032)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 伊勢物語 / 伊勢物語絵巻 / 住吉如慶 / 愛宕通福 / 物語絵 / 絵巻 / やまと絵 / 住吉派 |
Outline of Annual Research Achievements |
①作品調査 住吉如慶筆の次の2作品について、熟覧と部分撮影などの調査を行った。「紀州東照宮縁起絵巻」5巻本(紀州東照宮蔵)7月29、30日実施。「伊勢物語絵巻」6巻本(東京国立博物館蔵・如慶本と略称)8月6日実施。いずれも大部の絵巻であるため、描写や構図を比較する上で多くの貴重なデータが得られたことと、併せて、細部までおろそかにしない丁寧な制作姿勢が確かめられ、顔料など材料の質の高さも読み取れた。 ②詞書本文の分類 如慶本絵巻詞書の定本については、研究主担である国文学専攻の研究分担者によって、藤原定家の天福本系統であることがあらためて確認された。この系統の定本は写本類にも多く用いられており、そのことは如慶本が伊勢物語絵の正統な系譜を引いて制作されているとの判断を導く。 ③絵画部分の読み取り 全125段のうち、第1巻、第2巻(第1段~第43段)の読み取りを終えた。当初は第1巻~第3巻までの読み取りを完了する予定であったが、各場面の緻密な描写を追いながら絵と詞書との対応を解釈する上で研究分担者が意見を述べあいながら進めることにやや時間を要したため、計画の進行を阻んだ。しかし、丁寧な読み取りができたため研究成果に繋がり、メリットになると考えられる。 ④絵画表現の考察 研究主担は研究代表者を含めた美術史と建築史・住宅史の専攻者である。主要人物の表情は、物語の場面状況を反映させ、微妙な描写の差異が見て取れた。建物や草木などの景物描写は精緻な筆遣いで特徴を捉えていることがわかった。建物には構造に多少不自然な点も認められたが、それは画面構成を重視したためなのか、他に目的があるのか結論には至らなかった。他の場面を読み解いて行く中で総合的に検討することとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作品調査は計画に挙げた2作品について実施できた。作品を研究分担者とともに熟覧することで、複数の視点から描写の特徴にアプローチができ、これまで気づかなかった新知見も得られたことは成果である。また場面の読み取りに関しては、調査時に撮影した部分画像を映写しながら意見を交わしたが、その際に熟覧による作品認識が活かされた。 場面の読み取りは、第1~3巻までとした当初の計画が3分の2に当たる第1、2巻に止まった点で計画通りには行かなかった。しかし全体的な研究の進行に支障となるほどではなく、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、如慶本第3、4巻の場面読み取りを行う。またアメリカの美術館が所蔵する伊勢物語絵の調査を行う予定である。その美術館は、インディアナポリス美術館、クリーブランド美術館、ミネアポリス美術館、ネルソン・アトキンス美術館ほかで、既知の作品をはじめ、住吉派、土佐派のやまと絵や近世の源氏絵など伊勢物語絵に関連する作品を主に調査し、本研究対象の如慶本の特徴を多角的に研究する上で役立てる。 平成28年度は、如慶本第5、6巻の場面の読み取りを行い、全巻の読み取りを完了させる。伊勢物語の注釈書からのアプローチ、粉本の有無や他本の影響などにも考察を進め、特徴を明らかにして如慶作品のなかで如慶本を位置づける。研究が進んでいない詞書筆者愛宕通福の書風や関連作品の調査も行う。江戸時代の所蔵者である4代将軍徳川家綱正室高厳院と如慶との関わりから如慶本の制作背景をも考究する。如慶本を対象として、国文学、美術史、建築史・住宅史の研究者による学際的な研究から得られた成果を発表する。 本研究では如慶本が対象であるが、伊勢物語絵の大系を構築するための次のステップとして、江戸時代以降に展開される見立てなど伊勢物語絵の享受の多様性を見せる作品の調査研究に取り組むことを課題とする。
|
Causes of Carryover |
平成26年度の直接経費のうちの物品費に、研究対象の「伊勢物語絵巻」の画像データの取得経費を計上していたが、撮影カット数が 予定枚数よりも減少したことによって取得経費が低く抑えられたことで残金が生じた。残金の一部は、印刷備品等の個数を増して前倒し取得する経費にあてたが、さらに約100,000円の未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金の全額は、平成27年度に計画している米国の美術館5館が 所蔵する作品調査で得られるデータ整理を平成28年度の予定から前倒しして行うための経費として、平成27年度の直接経費に追加する。
|
Research Products
(13 results)