2015 Fiscal Year Research-status Report
伊勢物語絵の体系構築に向けた近世作品の研究ー住吉如慶筆「伊勢物語絵巻」を中心にー
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26370144
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Research Institution | Osaka University of Arts |
Principal Investigator |
河田 昌之 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (20712061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 紀子 羽衣国際大学, 現代社会学部, 教授 (30212955)
山本 登朗 関西大学, 文学部, 教授 (40210538)
田中 まき 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (50299088)
徳原 賜鶴子 (青木賜鶴子) 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60180139)
赤澤 真理 同志社女子大学, 生活科学部, 助教 (60509032)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 伊勢物語 / 伊勢物語絵巻 / 住吉如慶 / 愛宕通福 / 物語絵 / 絵巻 / やまと絵 / 住吉派 |
Outline of Annual Research Achievements |
①作品調査 アメリカの美術館、図書館が所蔵する伊勢物語絵の調査を8月下旬に行った。対象とした美術館、図書館は、1ネルソン・アトキンス美術館(8/17)、2ミネアポリス美術館(8/18)、3インディアナポリス美術館(8/20)、4クリーブランド美術館(8/21)、5ニューヨーク・パブリック・ライブラリー(8/22)、6メトロポリタン美術館(8/24)でる。調査した作品は、宗達の伊勢物語図色紙、住吉如慶や具慶、土佐派絵師による近世の伊勢物語絵を中心に、併せて近世の源氏絵や歌仙絵など伊勢物語絵に関連する作品も含めた。多くの作品が調査できたことによって、本研究対象である如慶本伊勢物語絵巻の特徴を多角的に研究する上での貴重な資料が得られた。また各美術館の学芸員や研究者と情報の交換ができたことも今後の研究にとって収穫であった。 ②絵画部分の読み取り 如慶本第3、4、5、6巻の場面の読み取りを終了した。平成27年度当初の計画では、如慶本第3、4巻を対象とするとしていたが、平成28年度に予定している注釈書や版本との関連、詞書の料紙装飾などの研究効率を考えて、読み取りを終了させることを先行した。その結果、読み取りは順調に進み、平成26年度から継続してきた全6巻の絵画部分80場面すべての読み取りを終えた。 ③絵画表現の考察 3~6巻を対象にして、美術史と建築史・住宅史の専攻者がそれぞれの立場で意見を出し、分担研究者と議論を重ねて、筆致、彩色、画面構成、描かれた建築の要点を取り上げた。その中で、絵巻の所々に組み入れられた1メートルを超える長さの料紙に描かれた場面は、遠近感を強調し、緻密な描写を用いて独自の画面に仕立てていることが確認でき、他の伊勢物語絵に比べて本絵巻が有する大きな特徴であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカの美術館、図書館が所蔵する伊勢物語絵をはじめとして関連作品の調査を行うことが平成27年度の主たる研究目的であった。調査対象館の各担当者と事前に打ち合わせを進めていたので、予定していた6箇所の所蔵作品調査がもれなく行えた。作品を熟覧することによって彩色や金銀箔による装飾などが生み出す表現効果について認識が新たにできたこと、その作品調査の経験が本研究対象絵巻の絵画場面を読み取る場合に基礎的な知識として活かされ、読み取る内容が深められた。 平成26年度に行った絵巻1、2巻の読み取りには海外作品の調査が反映されておらず、再度の読み取りが必要になる点では課題を残しているが、それ以外の研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画にそって、①『伊勢物語和歌知顕集』など伊勢物語の主要注釈書や版本の伊勢物語諸本と如慶本伊勢物語絵巻の絵画場面との関連②絵師住吉如慶や詞書筆写愛宕通福の作品研究粉本の有無や他本からの影響関係③詞書の料紙装飾、を主にして調査研究を進める。これに加えて、④全80場面の読み取り内容を見直す。 月1回のペースで開いている研究会において、研究分担者による担当分野の発表と参加者との議論を行い、研究の充実を図る。国文学、美術史、建築史・住宅史の研究者による学際的で総合的な研究により、如慶作品のなかで如慶本伊勢物語絵巻を位置づけ、その成果を発表する。 今後は、如慶本研究の成果を活かし、見立てをはじめ料紙下絵や工芸作品に見られる伊勢物語を題材とする作品に調査研究対象を広げ、伊勢物語絵の享受の多様性が把握できるように取り組み、伊勢物語絵の大系構築を実現させる。
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Causes of Carryover |
平成27年度の直接経費のうち、旅費として計上していた予算に関して、アメリカの美術館、図書館6箇所を移動する手段として、空路と陸路を併用する計画に基づいて見積もっていたが、短期間に効率よく移動するため、陸路を止めて空路のみに変更した結果、見積もり額に赤字が生じることが予測された。その対策として、備品購入に当てる予定の物品費とデータ整理等に当てる予定の人件費・謝金を見直した。とくにデータ整理にあたっては研究代表者が行うこととした。減額できる見込み分を旅費に廻した。その結果として、約220,000 円の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金の全額は、平成28年度に予定している国内の作品調査の旅費として平成28年度の直接経費に追加する。
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