2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370186
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高木 繁光 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00288606)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドキュメンタリー映画 / 記憶 / 土地 / ジャン・クロード・ルソー / マルグリット・デュラス |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスからジャン・クロード・ルソー監督を同志社大学に招聘し、ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレとの交友関係について、小津安二郎、マイケル・スノー、ロベール・ブレッソンから受けた影響について、ドキュメンタリー映画における音と映像の関係について、『ローマの遺跡』、『スリー・タイムズ・ナッシング』、『keep in touch』、『ヴェニスは存在しない』、『テラスの眺め』など「土地の記憶」をめぐるルソー作品の構成、制作過程についてインタヴューを行った。また、実際にカメラを持ち出して風景をどう撮るか、それが映画として成立するための条件(画面サイズ、フレーム、時間の持続、偶然性など)について実地指導を受けた。今日のドキュメンタリー映画の到達点をルネッサンス期以降の文学、美術との関連も含めてルソー監督が語る貴重なインタヴューであり、複製技術時代の芸術の特性解明のために重要な視点を多々与えてくれる。これを基にルソー監督における土地と記憶の関係について論文を纏める準備を進めている。 また、マルグリット・デュラスの小説及び映像作品に見られる土地と記憶のテーマの分析にも着手した。特にデュラスが幼年を過ごした熱帯地方の記憶に関わる『インディア・ソング』、ナチスによるホロコーストの記憶をパリ、バンクーバー、ノルマンディー地方などの風景=イメージとを結合した『オーレリア・シュタイネル』、『ガンジスの女』などの映像作品において、ナレーション、声が果たす役割、音声とイメージとの相互関係について、文学表現との相違も視野にいれながら検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「映画における土地と記憶」のイメージ化の基底にある映画的思考を、複製技術時代の芸術に共通する特性との関連で解明するという研究目的は、おおむね順調に進展している。当初予定していたネストラー監督へのインタヴューが高齢など諸般の事情から実現できていないが、代わりに同じくドキュメンタリー映画の前衛で活躍するルソー監督を招聘し、貴重なインタヴューを得られたことは、研究の進展に大いにプラスとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はデュラスの小説、映画作品における「土地と記憶」のテーマ分析を深化させるために、デュラス映画の編集担当であったドミニック・オーヴレイ氏を招聘予定である。オーヴレイ氏は現在でも、「土地と記憶」をテーマにした映画を撮り続けるペドロ・コスタ監督などの作品の編集者でもあり、本研究にとって有益なインタヴューを得られるだろう。また、当初予定していたルドルフ・トーメ監督へのインタヴューの実現にも努めたい。高齢のネストラー監督へのインタヴューは、メールなどによる代替措置を検討中である。
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