2014 Fiscal Year Research-status Report
障害児に対するバレエワークショップの実践方法とその効果に関する調査研究
Project/Area Number |
26370195
|
Research Institution | Showa College of Music |
Principal Investigator |
小山 久美 昭和音楽大学短期大学部, その他部局等, 教授 (70525104)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | バレエ / 学習障害 / 教育 / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って、ダウン症関連の文献を収集した後、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団で障害者たちによるFreefall Dance Companyの活動を見学し、その担当者から十分なインタビュ-調査を実施することができた。 Freefall Dance Company では、決まり事を作り時間をかけて繰り返し練習する。指導者は彼らの動きの中から美しいものを探し、どこまで動きが発展するかを見極め、そして一緒に楽しむ。これらが具体的な実践方法であった。その前提には、バレエ団と養護学校双方の指導者の綿密な連携が必須である。 当初「障害児に対するバレエワークショップ」は、音楽療法等と同様に、バレエを通して障害の克服を促し、治療的、教育的技法として知的障害児の発達を補助する可能性があるものと想定していた。しかし実際のFreefall Dance Companyは、治療的な意味合いではなく、むしろアーティストとして社会に向けて独自の表現を発信し、また同じ知的障害者たちからはスターのように憧れる存在であり、その事実に少なからず衝撃を受けた。日本と比較し、障害者のおける環境の違いや国民意識の相違もあるだろうが、今後の研究を進行させるにあたり、障害者の持つ可能性を一方的に狭めることのないよう留意して、ワークショップの在り方を検討するべきだと再確認した。 また英国訪問時には、フランスでの実情調査を追加し、パリオペラ座関係者から状況を聴いたところ、フランスでは同様のワークショップや公演以外の社会的活動は実施されていないことが判明した。 これらの調査結果は、文化庁「文化芸術による子供の育成事業」において、特別養護学校でのワークショップ開催時にも活用し、現場での応用について同時に検証を続けている。今後は、治療的に実施されているバレエワークショップの手法と比較し、新たな知見の獲得を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団での訪問調査は、ちょうどFreefall Dance Companyの公演に合わせることができ、彼らの舞台稽古と本番を見学することができたのは、大変大きな収穫であった。また10年以上にわたり連携しながらこの活動を実施している養護学校の指導者とバレエ団の指導者双方から、詳しい内容を直接聞き、疑問点についても質疑応答をすることができた。我々も障害児へのワークショップの実施経験があり、同じ目線を持ち共通認識を持つ立場で、意見交換が出来たことは非常に貴重な機会となった。 音楽療法との比較については、英国での調査が治療的な効果を狙ったものではなかったため、実際の現場の見学は実施しなかったが、音楽療法に関する研究会に参加し、研究者から話を聞くことは行った。次年度の新たな調査研究に向けて十分な準備が整ったと判断できることが、その理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、当初計画通りボストン・バレエスクールのアダプティブ・ダンス・プログラムを訪問調査する予定である。おそらくバーミンガムのFreefall Dance Company とは目的や方針が異なり、より治療的で科学的な根拠に基づいた実施方法がとられているのではないかと推測している。 また今後は、国内において、バレエ以外の分野で実施されている学習障害者やダウン症児を対象とした活動を併せて調査していく。実際のバレエ団やバレエダンサーが行っている海外での事例と、音楽療法を含むバレエ以外の事例を国内調査し、その比較と分析を進める。現場に精通した目線から、バレエを通した障害者に対するワークショップの具体的な実施方法を探求し、文化庁事業で行っている特別養護学校でのワークショップの実践に活用しながら、その効果を検証していく。
|
Causes of Carryover |
前倒し支払請求をしたところ、差額が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画に沿って、米国ボストンでの調査費用に充てる予定。
|