2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370198
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Research Institution | Satistical Information Institute for Consulting and Analysis |
Principal Investigator |
坂部 裕美子 公益財団法人統計情報研究開発センター, その他部局等, 研究員 (50435822)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大衆芸能 / 興行史 / データベース / 統計分析 / 時系列比較 / 歌舞伎 / 落語 / 宝塚 |
Outline of Annual Research Achievements |
・新派の90年分の興行記録(劇団新派発行の「新派」別冊「年表」)を入手できたので、集計用にこれの一部(戦後の興行分)をデータ化した。この興行記録には疎漏が認められるとも聞くが、欠落部分を補完して現在まで接続された新派興行データベースが近日中に公開予定、との情報を得ているので、これが公表され次第データを再整備する予定である。 ・客員研究員を務める立命館大学アート・リサーチセンター主催の研究会や統計分析ソフトSASのユーザー総会、前年に新規入会した日本演劇学会の研究集会等に引き続き参加し、これらの分野の研究の最新の動向を把握するとともに、人的交流を深めた。さらに年度後半からは、早稲田大学オペラ研究所における招待講演を機に、近年興行記録の分析が活性化しているという日本音楽学会の全国大会にも参加し、新たな研究の方向性を開拓した。 ・これまでの分析結果をベースにして、所属機関発行の雑誌「ESTRELA」に隔月で「伝統芸能興行データ集計・その一里塚」という記事を連載している。「雑誌の最新号への掲載記事」であるため、最新の視点からこれまでの研究成果を取りまとめ、もって研究成果の広報とした(取り扱いテーマは5・11・3月号:落語、9・1月号:歌舞伎)。 ・「統計分析」という手法になじみの薄い研究者には研究の成果をダイレクトに伝えにくい、ということが研究を進めていく上の最大の難題だと感じ続けており、今後は「結果の紹介方法」の研究も必要と思われる。そこで、直感的にデータの趨勢を伝えられるデータビジュアライゼーションツールについても研究を始め、その成果を人文系データベース協議会第21回公開シンポジウムで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ化済データの分析(特に分野横断的な分析)を進める傍らで、これまでにデータ化および業界構造分析を進めてきた歌舞伎・落語・宝塚との比較を可能にする、新派や新国劇に関するデータの探索・収集も着実に進んでおり、おおむね当初の計画どおりに進展している。 さらに今年度は、従来想定さえしていなかった分野(主として音楽分野)の研究者との交流が新たに生まれ、さらなる研究の進展方向をも模索できる段階となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
未データ化興行記録のデータ化や、関心を持ちつつも未だ分析に着手できていないテーマに関するデータ比較分析は着実に進めていくが、今後は広報にも重点を置き、報告書の刊行や研究集会の開催を計画している。データ探索の際に、過去の興行データの滅失という現実に度々遭遇しており、データ化は急務であるとの意識のもとにデータ整備に励みたい。 さらに、これまで「伝統芸能興行データベースを、過去の記録の縦覧用ではなく、統計分析の対象として扱う面白さ」を伝えるための「手段」として開発・紹介してきた、データベース処理効率化プログラムや分析の手法自体が、他分野の興行データベース分析にも応用できる、という手応えを感じており、今後は昨年度以上に積極的に、演劇分野以外の研究の情報を集めていきたい。
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Causes of Carryover |
計画では、この段階までにある程度の「紙媒体等のままでデータ化の済んでいない興行記録」を発見してデータ化を進める予定であったが、いまだ発見に至っておらず(探索は鋭意継続中で、所蔵状況について照会中の案件もある)、その入力経費として計上した人件費・謝金の使用が事前予想に達しなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまではインプットが中心で、研究成果の広報は学会等の報告に限られていた。しかしこれでは広報の対象が限定的なので、成果報告の場の拡張を目指して、同様の研究者や業界関係者を講師とする研究会を定期的に開催し、議論の場を増やしたい。 無論、資料の探索は継続し、データ化作業が必要になった場合は、準備が完了し次第入力作業に入る。
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