2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370202
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漢文笑話 / 小咄 / 善謔随訳続編 / 訳準笑話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸後期から明治初期の漢文笑話集および漢文小説に 収められた漢文笑話の所蔵・書誌の調査、訳読と作品の分析を行い、各話の特色、パロディ化された出典の変遷を導く。これにより、江戸後期および明治の漢文笑話が、江戸前期漢文笑話の特徴であった小咄の翻案や中国『笑府』の模倣の枠を超えて、風刺性・物語性が増加していくことを導き、その背景を考証するものである。 本研究は、これまで、日本における漢文笑話作品集のうち、『笑門』(1797)、『胡盧百転』(1797)、『笑堂福聚』(1804)、『善謔随訳続編』(1798)、『奇談新編』(1842)の基礎的調査と訳読を終えたが、今年度は『善謔随訳続編』について、個々の笑話を『沙石集』の影響・先行小咄との関連性 ・中国由来の典故の使用実態・使用語彙の特質・仏教色等の側面から考察し、訳読・解説およびその考察結果を論文として発表した。すでに発表公刊している「善謔随訳続編を読む(一)」(『富山大学人文学部紀要第67号』)に続編である、「善謔随訳続編を読む(二)」(『富山大学人文学部紀要第67号』)「善謔随訳続編を読む(三)」(『富山大学人文学部紀要第68号』)の二篇がそれである。その中では、『善謔随訳』と『善謔随訳続編』の相違とその背景にも言及した。 また、『訳準笑話』作品と明代『笑府』の関係について、一昨年、中国寧波天一閣博物館・上海復旦大學古籍整理研究所共催の「明代的書籍與文學國際學術討論會」において発表した内容に基づき、中国の研究誌『文匯学人』第308期に、「從中國笑話到日本小咄」と題して発表した。この論考は、中国の笑話「笑府」の影響下にあると思われる『訳準笑話』作品を、『笑府』の原話と比較し、①用語の文言化、②内容の日本化、③ストーリーの合理化、④中日笑話の相違等の視点から考察したものである。 他、『奇談新編』についても、訳読と解説を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も、複数の作品集の解読を行い、江戸漢文笑話の特徴を解き明かすことができた。また、その成果を三本の論文を発表している。ただ、本文・訳読・解説・考察からなる本研究は、研究成果としては量も多く、毎回発表できる紀要などの紙幅に限界があるため、今後は、書籍などの発表の方法を模索したい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を、継続して論文の形で発表していきたい。ただ、一冊の笑話集ごとに作者が異なり、研究書が少ないこともあって、作品ごとの出版背景などについても、十分な調査が必要となる。 就中、作者が具体的にどのような人物であるかの調査は、笑話の解釈にも大きな影響を与える。今後は、作品の訳読と解説の正確性をより高めるために、作者とその周辺についての調査にも更に力を注ぎたい。
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Causes of Carryover |
予定していた作品の解読は計画通り進行したが、笑話集の作者及び出版事情などについて、更なる考察が必要であり、それによって新たな展開が見込まれると思われるため。 『奇談新編』の作者、および時代についての調査。作者の作品化の意図の考察。考察結果の公開を主とする。
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Research Products
(3 results)