2014 Fiscal Year Research-status Report
古代日本における口承文学の地域的多様性と表記の関連についての研究
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26370210
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
遠藤 耕太郎 共立女子大学, 文芸学部, 教授 (50514113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 直巳 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (20141301)
富田 美智江 流通経済大学, 教育学習支援センター, 専任所員 (40615952)
岡部 隆志 共立女子短期大学, 文科, 教授 (50279733)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 口承文学 / 伝承 / 語り芸 / 序詞 / 音仮名 / 歌掛け |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年8月18日~9月2日にかけて、ナシ族の呪的宗教者ダパの儀礼調査、ナシ族の民間歌謡のゼンジュと呼ばれる修辞法、ペー族の祭文及び本子曲の調査を中心としたフィールドワークを行なった。 ナシ族歌謡に見られるゼンジュと呼ばれる修辞法を、中国雲南省麗江市にて調査した。本研究は口承文学と記載文学の並存に着目し、口承文学の地域的多様性を明らかにしていくことを目的としているが、ゼンジュは、漢詩の双関語(日本語の序詞と近似した漢詩の修辞法)の伝来を基として、地域的に口承化したものである可能性が見えてきた。こうしたあり方は、古代日本の序詞のありようを考える際のモデルになる。 ペー族の本子曲(漢字で記されたペー語の台本を語る語り芸)と歌掛けの関係を、雲南省剣川県で調査した。『梁山伯と祝英台』という中国中原に起源を持つ物語が、大理、剣川に伝来した結果、大理(かつての南詔国や大理国の都のあった地)では訓字主体の台本となり、厳格な師弟関係による教授によって伝承されるのに対し、辺境にある剣川では音仮名主体の台本となり、物語もあらすじ化され、代わりに歌表現が取り込まれ、自由な改変が可能なものとなったということが分かってきた。この地域差はそれが伝承された地域が国家の都なのか、その辺境の歌掛けが盛んな地域であるのかに求められると思われる。こうしたありようは、古代日本の文字表記のありよう(音仮名主体の歌木簡、万葉集の書記法)を考えるための有効なモデルとなりうると思われる。 また、大理市では、趙丕鼎氏の祭文を活字化した。また剣川県では、二種類の祭文を歌ってもらうことができた。これらの祭文の分析は、次年度に行うことになる。なお、国内では毎月1回の研究会を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画の中心は、ペー族祭文調査であった。大理市での趙丕鼎氏の祭文は、すでに録画、活字化が終了し、次年度の分析を待つところまできている。また、剣川県にて入手した二種類の祭文については、その録画が終了し、現在活字化を行なっている。次年度に分析が行なえる予定である。語り芸の台本が、大理では訓字主体、剣川では音仮名主体であったが、祭文も、おおよそ似た傾向が見られるが、そういう表記が、内容とどのように関わるのかについての考察を次年度には行なう予定である。 こうした祭文調査と並行して行なったナシ族のゼンジュ調査、ペー族の語り芸の調査は、予想を越える収穫を得た。すでに、これを基にした論考を発表しており、最終的に、口承と記載の地域的多様性が、さまざまな側面から捉えられると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、8月から9月にかけて、遠藤・岡部・山田が、中国雲南省ニンラン県に赴き、ダパの葬送儀礼についての調査を行い、その後、雲南省剣川県及び雲龍県に赴いて大本曲を中心とした調査を行う。訓字主体表記(大理地方)、音仮名主体表記(剣川地方)とは異なる新字主体表記によって記されるところに特徴をもつ雲龍県の大本曲を、現地で実際に演じてもらい、その台本を資料化し、語り手の意識をインタビューによって調査する。 平成28年度は、遠藤・岡部・山田・富田が、中国雲南省麗江市及びニンラン県永寧郷のナシ族地区で現地調査を行う。麗江市において同市トンパ文化館所蔵の木氏歴代総譜を調査する。音仮名で記された冒頭の神話部分をトンパ経典と比較するとともに、民間において無文字で伝承される神話を、それがどのような場で、どのような意図をもって歌われるのかなどを含めて聞き書き調査を行う。 なお、平成27年度、28年度を通じて、国内では、月に1回の研究会を重ね、資料化、資料化されたものの分析を行なう。
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Causes of Carryover |
依頼した翻訳の一部が当該年度内に仕上がらず、次年度に移行したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の人件費・謝金に計上した。
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