2017 Fiscal Year Research-status Report
『万葉集』の本文と付訓の戦後研究史総括と新時代への《読み》の可能性提示の研究
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26370213
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大浦 誠士 専修大学, 文学部, 教授 (10319212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 右富実 関西大学, 文学部, 教授 (30244619)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 万葉集 / 古代文学 / 上代文学 / 古代和歌 / 和歌 / データベース / 注釈史 |
Outline of Annual Research Achievements |
万葉集の漢字原文、訓読の歴史を精査し、新たな読みの可能性を模索する本研究課題の根幹となる作業として、本年度も注釈書における原文・訓読データの入力・校正を引き続き進めた。 その副産物として、本年度は万葉集中に見られる同一歌と類似歌を摘出し、そこに見られる編纂の意識の考察を行った。万葉集中では、全く同一の歌についてはその旨の注記が見られないにもかかわらず、小異の類似歌については、先に「同一の」歌が見られる旨と、「重載」「累載」する旨の注記が付されており、その同一性をめぐる意識には古代における歌に対する認識が表れているように思われるのである。同一歌・類似歌の摘出については、未だ未完成ながら、本研究課題の遂行を通じて構築してきたシステムを用いた。 その研究の成果については、平成29年8月21日~23日に行われた古代文学会夏期セミナーにおいて「万葉集の『重出歌』」と題して研究発表を行い、古代文学会の学術雑誌『古代文学』57号(2018年3月)に論文として発表を行った。 また、万葉集の歌においてこれまで餘り注目されてこなかった「なへに」という語句を用いた歌を摘出し、その表現性について考察を行った、その成果については、平成29年度中に複数の研究会において研究発表を行い、平成30年度刊行予定の『万葉集研究 三十八集』(塙書房刊)に論文として発表する予定である。 研究課題の遂行にあたり、若干の遅れが生じており、一年の期間延長を行ったが、その過程において様々な成果が生まれているのが現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は、戦後の万葉集注釈書を対象として、漢字本文・訓読の様相を総括し、データベース化することによって校合・訓読作業のスピードアップをはかり、未来に向けて新しい万葉集の読みの可能性を切り拓くことにある。そのためには各注釈書の漢字本文・訓読の入力と校正の作業が必須となる。基礎となるデータに誤りがあってはすべてが無意味となるからである。それゆえ、データの入力・校正には細心の注意を払いつつ進めている。 その統括は研究代表者・研究分担者が行っているが、実際の作業はアルバイトを雇用して行っている。しかし、經年による進学・卒業・環境変化等により、アルバイトの交替が多くなり、引き継ぎ等により、計画のスケジュール以上に時間が必要となった。 システムについては、研究分担者によって既に構築されており、残りのデータを完成させ、データを加える状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は一年の延期により本年度が最終の年度となるため、やや遅れ気味のデータ入力・校正を着実に進め、システムに加える作業を行う。 その一方で、これまで進めてきた範囲での成果に基づくその副産物的研究として、万葉集の文字表記、歌の表現等についての研究を精力的に推し進めてゆく。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況にも記したように、アルバイトを雇用して行っている万葉集註釈書の漢字原文・訓読のデータ入力・校正の作業がやや遅れ気味であり、アルバイトの人件費の支出が予定よりも少額となっていることが大きな要因である。 本年度はデータ入力・校正作業を精力的に進め、本年度中に作業を終了させる計画である。そのため、本年度の助成金使用は、人件費が中心となる予定である。
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Research Products
(1 results)