2016 Fiscal Year Research-status Report
中・近世日本における中国明代日用類書の変成―異類・異界表現を中心に―
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26370225
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
齋藤 真麻理 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50280532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本文学 / 絵巻 / 奈良絵本 |
Outline of Annual Research Achievements |
中・近世期の文芸は文字と絵画の交錯の上に成立したところに大きな特色がある。奈良絵本と通称される豪華な絵本・絵巻に注目すると、多様な文学作品が豪華な絵入り本のかたちに仕立てられ、享受されている。 従って、本研究においては異国・異類表現の考究に際し、平成28年度も多くの奈良絵本や絵巻の調査を行った。その結果、物語や説話、和歌資料等の文学作品のみならず、宮中の儀礼を解説する『百寮訓要抄』なども奈良絵本として制作されていた実態が浮かび上がり、奈良絵本の帯びていた祝言性が改めて浮き彫りとなった。 さらに平成28年度は異国表現の考究を目的に「万国人物図」の作例を調査するとともに、平成26~27年に調査を行った『異代同戯図巻』『山海異物』をめぐって関連資料を探索し、これまでに蓄積した書誌・画像データの補完とブラッシュアップを行った。『異代同戯図巻』は狩野派の絵師による戯画図巻であり、『山海異物』は中国明代の日用類書を奈良絵本に仕立てた作である。いずれも17世紀の作、奈良絵本が陸続と制作された時期に当たる。 これら絵入りの写本群は、従来、ともすれば写本文化の範疇において研究される傾向があり、出版文化を起点とした考証はいまだ十分ではなかったといってよい。本研究においてはこの点を省みて、平成28年度にはさらに『異代同戯図巻』の異形の表現に注目して研究を深め、狩野派の戯画が中国明代の漢籍から多くの素材を得ていることを突き止めた。日本国内外の出版文化は、我が国の絵画表現に多大な影響を及ぼしているのである。 本研究は異国・異界表現の考究を目的として計画・推進されたものであった。その実施を通じて見えてきたのは、我が国の絵巻や奈良絵本群と中国明代の漢籍との交流のすがたである。次なる課題として、たとえば17世紀狩野派の営為を日本国内外の出版文化から検証し、画題研究へと発展させることが期待されよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に調査計画を実施することができた。海外の所蔵機関への渡航調査が必須であったが、調整が十分につかず、調査を延期したところがある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長し、海外の所蔵機関への調査を十全に行う。既に調査日程について、先方との調整を進めており、平成29年度前半に調査終了の見込みである。
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Causes of Carryover |
おおむね順調に調査計画を実施することができたが、海外の所蔵機関への渡航調査が必須であったが、調整が十分につかず、調査を延期したところがある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究期間を延長し、海外の所蔵機関への調査を十全に行う。既に調査日程について、先方との調整を進めており、平成29年度前半に調査終了の見込みである。
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