2014 Fiscal Year Research-status Report
1930年代日本の経済と地方・農村・満洲の文学における表象に関する研究
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26370228
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山崎 義光 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10311044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畔上 秀人 京都学園大学, 経済学部, 教授 (90306241)
高橋 宏宣 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90310987)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本文学 / 1930年代 / 経済 / 地方 / 農村 / 満州 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、本研究のテーマにかかわる基礎的な調査研究を中心に行った。研究経過報告・会議を、2014年9月1日(第1回、仙台市、ホテルベルエア2F会議室3)および2015年3月20日(第2回、京都市、京都学園大学サテライト教室)に、2回おこなった。第1回は3名(山崎、畔上、高橋)、第2回は2名(山崎、畔上)が参加した。それぞれ、各自の研究経過を報告するなかで、資料に関する情報交換、研究テーマについての報告と討議を行った。 山崎義光(代表)は、1930年前後における伊藤永之介「恐慌」と久野豊彦「人生特急」の二つの作品を取り上げて、その経済小説としての性格をふまえながら、1930年代におけるプロレタリア文学派と新興芸術派の接近、および政治的・芸術的前衛の失調をめぐる同時代的な動向について、研究成果の一部を口頭発表した。 畔上秀人(分担)は、1930年代における金融活動の状況を踏まえ、伊藤永之介「恐慌」、久野豊彦「人生特急」をとりあげながら、その経済現象に関する表象のリアリティと経済の動きをとらえる理論的限界について、研究成果の一部を京都学園大学主催市民講座で講演した。 高橋宏宣(分担)は、伊藤永之介の文学における地方・農村に関する研究を進めた。伊藤については、完備された全集もなく、本文テキストの収集から書誌情報の確認に至るまでの基礎的調査が必要である。当該テーマに関する伊藤の同時代的な位置づけを含めた調査研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、伊藤永之介「恐慌」がモデルとなった1927年の昭和金融恐慌の実際をどの程度反映しているかを、取付騒動を起こした銀行、企業、議会の動きなどについて調査を行った。その結果、変名を用いながらもかなりの程度において時事的な出来事を反映していることを確認した。久野豊彦「人生特急」は、架空の出来事を設定して書かれている。だが、背景の出来事については、1932年当時の時事的話題を取り込みながらリアリティをもって表象されていることを確認した。 研究を進めるなかで、1930年前後の日本文壇における文学観の対立よりも、むしろ立場を異にしながらも共通に同時代の社会を表象しようとした動向が見えてきた。そうした「文学」ジャンルの言説領域における同時代的な動向も視野に、そのなかで経済現象の動きがどのような意味をもって書き込まれているかについて検討を加える必要性を認識した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、1930年代前後の文学における経済現象の表象を踏まえつつ、地方・農村・満洲の表象に関する研究を進める。 山崎義光は、島木健作における地方・農村の表象に関する研究を進める。その際、地方・農村を文学的題材とした同時代的な動向を視野に、その中での特質と意義を考究するものとする。 畔上秀人は、金融「投資」が「投機」と区別しがたい形で否定的にのみ描かれる限界をもつことも見えてきた。当時の経済理論の水準と、実体経済における事例を踏まえながら、経済学的観点からみた文学的表象の評価をおこなう。 高橋宏宣は、伊藤永之介の地方・農村の表象に関する調査研究を継続するとともに、文学における満洲の表象に関する調査研究を進め、同時代的な地方表象とのつながりのなかに位置づけて考究する。 平成26年度同様、それぞれの研究経過報告および資料や研究方法に関する情報交換、資料収集のため、2回程度の会合を行う予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定だった研究資料書籍が版元品切れ、また古書での入手できなかったことによる。次年度、研究推進上必要不可欠な資料購入、資料収集のために使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍等研究資料の購入に使用する。
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Research Products
(4 results)