2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the historical significance of the literary history of Renku that Chomu participated.
Project/Area Number |
26370232
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
中森 康之 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (80320604)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 蝶夢 / 連句 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず平成28年度までに、かねてより研究上の連携をしている田中道雄氏・玉城司氏・伊藤善隆氏が主として収集翻刻されたものと合わせて、現在知られている蝶夢同座連句作品193点(田中道雄氏作成「蝶夢同座の連句目録」(田中道雄・田坂英俊・中森康之編著『蝶夢全集』和泉書院 平成25年6月)全ての翻刻をおこなった。これについては、田中道雄・田坂英俊・玉城司・中森康之・伊藤善隆編著『蝶夢全集 続編』(仮称、和泉書院、平成31年刊行予定)に掲載予定である(入稿済)。 最終年度である平成29年度は、これらの連句作品の分析を行った。その結果、芭蕉ー蕪村ー一茶という頂点中心主義の俳諧史では捉えられなかった新しい俳諧の表現史が浮き彫りになってきた。それはこういうことである。蝶夢の発句が「内発的感情の重視、詠句の生活への取り組み」という点で、近代俳句の源流と認められることは、既に田中道雄氏に詳しい論考がある(「発句は自己の楽しみーー蝶夢の蕉風俳諧理念の新しさ」(「文学」2014年9,10月号 岩波書店)が、今回の研究で、やはり連句作品においても、同様の特徴が認められることが明らかとなった。それは大きく言えば、美濃派ほど卑俗ではなく、かといって蕪村ほど高雅ではないものとして、日常生活における情の機微を描く表現行為とでも言えるものである。そしてこれは、私が従来明らかにしてきた、芭蕉から支考へ、支考から蝶夢へ継承された俳諧本質論に基づく、俳諧の表現理論に裏打ちされたものであり、俳諧を狭い意味での文芸ではなく、広く日常生活において生きる意味を与える文化活動としての俳諧という「文学史的意義」を明らかにするものであると言える。 なお、連句ということに焦点を当てて言えば、この後、連句はそれほど盛んに行われなくなり、俳諧史は発句中心となる。このことの意味は、別途詳細に考察する必要があるが、今後の課題としたい。
|
Research Products
(4 results)