2014 Fiscal Year Research-status Report
GHQ占領期における近代化及び古典再編に関する諸言説分析を総合する文芸史的研究
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26370254
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Research Institution | Japan Institute of the Moving Image |
Principal Investigator |
志賀 賢子(川崎賢子) 日本映画大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40628046)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GHQ / 検閲 / 日本文学 / 文学史 / 近代化 / 古典 / カノン / 芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、20世紀メディア情報データベース(旧占領期新聞・雑誌情報データベース)を主たるツールとして、記事名・雑誌小見出し・新聞リードから、文芸の「近代化」「古典」「伝統」「封建主義」「(ハイカルチャーとしての)芸術」「芸能」「国民」「大衆」「民族」「人民」に関する、GHQ占領期に特徴的な言説の収集に着手した。 具体的な事例として特に今年度は「第二芸術」論争にかかわる言説の収集と分析を行った。桑原武夫「第二芸術」が初出時からGHQ検閲を受け、その方針を受け入れた形で本文をつくりだし、戦後版を重ねたこと、また中央文壇の専門的な文学者だけではなく、地方の様々な階層、職域、学生たちなどの小さな雑誌メディアから多様な声が上がっていたことなどを分析し、短詩型(俳句・短歌)ジャンルにおける占領期の近代化の過程および近代化が新たにつくりだした古典概念の内実等を考察した。 ほぼ月例で一般の聴衆にも公開されている「20世紀メディア研究所」(早稲田大学)の運営および査読付き機関誌『Intelligence』の編集に参画し、研究会の司会を務め、研究発表を行った。研究経過報告に対する専門的な知識の供与、アドバイス、査読を受けた。 学術誌『Intelligence』に論文を発表したほか、文芸誌、新聞などに文芸評論、エッセイの形で啓蒙的な文章を寄稿し、web上では、研究会員向けのニューズレターに研究ノート、コラムを執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
介護看取り等の事情のため、今年度は夏季休暇中に長期の海外調査を行うことができなかったが、国内でデータベース等を用いてできる限りの成果を上げ、研究会発表および査読付を含め年間数本の論文・エッセイを執筆することができた。調査収集の過程で、検閲関係者からの資料提供や、GHQに接収された施設の関係者の手になる肉筆資料等の一次資料も入手することができた。27年度には国際学会での発表等も決まっており、調査発表ともにさらに成果をあげられるよう、その土台作りをすることが26年度中にできた。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、戦後70周年という節目でもあり、国内外で記念シンポジウムや研究会、資料展示などが行われる。国内における月例の研究会運営・参加のほか、国際学会への参加、発表、日本語及び英語での論文執筆などの成果物をあげたい。前年度から引き続き文芸の近代化、伝統、古典化、芸術化についての言説を収集し、分析する。また米国メリーランド大学、ワシントン公文書館等における現地調査を行い、GHQのメディア政策、教育政策、検閲処分の動向と、占領期における文芸の「近代化」「伝統」「古典」「芸術」「芸能」言説との相関、変容について資料を収集し、これを分析する。戦前戦中から占領期へ、占領期から冷戦期へと、歴史的な連続と切断とを見渡すことができるよう、資料収集の幅を広げたい。
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Causes of Carryover |
介護看取り等の事情が生じたために出張調査ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、夏季休暇中に米国出張調査を予定している。9月末から10月初旬にかけてオーストラリア、シドニー大学における戦後70周年の国際研究集会での発表が予定されている。
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Remarks |
1は一般公開。2は査読付学術誌『Intelligence』購読会員への公開
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