2014 Fiscal Year Research-status Report
近世文化形成における歌舞伎興行と出版活動の連動についての基礎研究
Project/Area Number |
26370255
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
倉橋 正恵 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (90425017)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 歌舞伎 / 興行 / 番付 / 浮世絵 / 役者 / 出版 / 都市文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸後期の歌舞伎興行に着目し、その実態を明らかにすると同時に、歌舞伎興行が当時の社会の中でどのように機能していたのかを解明し、浮世絵や、見立番付、給金付けといった芸能関係出版物によって形成される出版文化が、都市文化へと展開していく様相を明らかにすることを目的とする。 平成26年度は、歌舞伎興行・劇場運営研究の基盤形成について力を入れた。具体的には、近世後期に編纂された歌舞伎年表資料の特色についての学術論文をまとめ、さらにボストン美術館所蔵歌舞伎上演資料の研究調査、大英博物館所蔵歌舞伎上演資料(絵尽し)についての目録化を実施した。大英博物館所蔵資料については、本研究で作成した調査データを大英博物館に提供したことにより、同館のWebサイト上で公開されている所蔵品画像データベースにおいて、本研究の研究成果が公開されている。また、学術雑誌にも目録を公刊載し、他の研究者の資料利用を促進させることができた。 歌舞伎劇場運営については、劇場による記録『中村座日記』を読み解くための研究会を発足させ、継続的に研究会活動を運営していくと共に翻刻刊行にむけての準備を開始した。 芸能と出版の関係性については、歌舞伎役者を対象にした風刺画の浮世絵についての学術論文を執筆した。さらに、役者絵を最も描いた浮世絵師歌川国貞の晩年の作品に注目し、絵師と役者の関係性、都市生活の中における歌舞伎役者の捉え方、及び芸能と浮世絵出版との関わり方の一例について学会で口頭発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歌舞伎興行の基盤研究においては、『中村座日記』を中心とする興行実態についての研究が遅れがちであるが、本研究全体としてはおおむね順調に進展している。特に、歌舞伎の上演が歌舞伎関係出版物に及ぼした影響、及び出版活動についての研究は、多様な資料を対象とした事例研究を進めることができ、その研究成果は学術論文及び学会口頭発表という形で公開することができた。 また、ボストン美術館所蔵の絵本番付、大英博物館所蔵の絵尽しなど、本研究で調査対象とした上演資料は、歌舞伎興行研究の基盤となるものであり、平成26年度に目標として掲げた資料整備を達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度より、近世期における歌舞伎興行の実態についての研究会が3ヶ月に一回開催となるため、より一層の興行実態の研究が進展していくと考えられる。また『中村座日記』の翻刻刊行にむけての準備も本格的に開始され、刊行用の入稿原稿の作成にも着手できると思われる。 歌舞伎興行の実態について明らかにすると同時に、実際の興行と、上演に即して作成される番付の出版活動と劇場との関わりについても考察を進める。 また、平成26年に口頭発表を行った浮世絵師による役者選定の問題についても学術論文としてまとめ、歌舞伎と出版活動の関係性についての考察も深めていきたい。
|
Causes of Carryover |
H26年度に予定していた資料入力作業者としてのアルバイト謝金について、予定金額よりも執行額が少なかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度からの継続である歌舞伎興行と歌舞伎関連出版物刊行の影響と関係性についての研究について、諸資料についてのデータ入力作業者を増やし、テキスト及びデータベースへの入力作業を進めて一層の推進をはかる。
|
Research Products
(5 results)