2014 Fiscal Year Research-status Report
出雲文化圏における椎の本花叔の文芸事蹟と交流実態に関する研究
Project/Area Number |
26370257
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
山崎 真克 比治山大学, 現代文化学部, 准教授 (10342544)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 出雲文化圏 / 椎の本花叔 / 雲陽人物誌 / 出雲歌壇 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、島根県立図書館に寄託される比布智神社春日家文書を主な対象として、椎の本花叔の文芸事蹟とその交流の実態を明らかにし、出雲文化圏の解明に資することを目的とする。応募者は、江戸後期の出雲歌壇の全体像を把握するため、江戸後期出雲歌壇を構成する歌人データベースの構築・分析を行ってきた。これに加えて、和歌に関する事蹟だけでなく、俳諧その他の文芸活動に携わった個別の人物・資料についての調査・分析を進め、出雲文化圏を重層的に明らかにする必要がある。そこで、比布智神社の神職で俳人としての事蹟が残り、出雲国の文化人に関する情報を収集し実際に交流もあった椎の本花叔に注目する。 まず比布智神社春日家文書の書誌情報をデータベース化した。古典籍に加え神社経営に関わる文書を多く含む寄託資料は全1530 点に及ぶが、このうち436 点は『比布智神社文書目録』として既に公刊されている。今年度は、未発表の状態である残りの資料について、目録カード情報を入手し「番号・標題・年代・西暦・作成・宛名・刊写・形態・数量・備考」の項目ごとにデータ化の作業を行った。 データベース化した資料のうち、花叔を中心とした春日家の人物の文芸活動の事蹟がうかがえるものについて詳細な調査を行った。今年度は、『俗記 橘隠独行記』『癸亥紀行』などの花叔著の紀行文を主な対象とした。また、出雲のみならず安芸・備後などの近隣諸国を範囲とした人的交流の解明に資するため、広島県立歴史博物館に寄託される国重要文化財「管茶山関係資料」のうち、和歌・俳諧を中心とした文学関係の古典籍を対象とした調査を行った。 調査・収集した資料のうち、『俗記 橘隠独行記』『癸亥紀行』などの花叔著の紀行文を対象とした内容分析を行った。特に、出雲に戻った花叔が再び旅に出る経緯などと、『雲陽人物誌』末尾に存する自伝的部分の記述との関連性について考察を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比布智神社春日家文書の書誌情報のデータベース化作業については、全1530 点のデータ化を完了するまでは至っていないが、人名録関係書・囲碁関係書や文書類などに21 点存する花叔の印記や署名のみられるものや、花叔周辺の春日家の人物の文芸事蹟に関わる資料を優先的に取り上げて進めている。データベース化の作業を通して整理することのできた書誌情報に基づいて、花叔著作を中心とした資料調査・収集も重点的に進めることができた。 花叔編『雲陽人物誌』については、既に全頁撮影および翻刻が完了し、私家版として活字化を行っていた。そのため、『俗記 橘隠独行記』『癸亥紀行』などの花叔著の紀行文の内容を分析して得られた出雲に戻った花叔が再び旅に出る経緯などと、『雲陽人物誌』末尾に存する自伝的部分の記述との関連性についての考察も順調に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
比布智神社春日家文書の書誌情報のデータベース化、および比布智神社春日家文書の調査・収集を今後も継続して行う。なかでも、花叔の印記や署名がのみられ花叔が書写もしくは所蔵していたと考えられる資料や、花叔の父紀重や兄易重(信風)など名がみえる資料に注目し、花叔を中心とした春日家の蔵書形成のありかたも視野に入れる。 花叔著作の内容分析も、データベース化および調査・収集作業と並行して、引き続き進めていく。『椎の本発句集』などの俳諧関係の著作を分析の中心に据えながら、島根県出雲市の手錢家蔵書に収められている花叔の短冊や俳諧関係の資料、広島県立歴史博物館に寄託される「管茶山関係資料」を対象として調査・収集を行い、出雲文化圏および近隣諸国を範囲とした人的交流の実態についての解明を行う。
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Causes of Carryover |
島根県立図書館に寄託される比布智神社春日家文書の調査・収集を主な目的として、国内旅費を計上していた。今年度は、『俗記 橘隠独行記』『癸亥紀行』などの花叔著の紀行文を中心に、春日家の人物の文芸活動の事蹟がうかがえる資料を対象とした調査(1泊2日、1回)、出雲のみならず安芸・備後などの近隣諸国を範囲とした人的交流の解明に資するため、広島県立歴史博物館に寄託される国重要文化財「管茶山関係資料」のうち和歌・俳諧を中心とした文学関係の古典籍を対象とした調査(日帰り、1回)を行うにとどまった。また、情報収集を目的とした学会・シンポジウム等への参加も、関西方面2回、山陰方面1回にとどまったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
通常授業期間の週末や、通常授業終了後の長期休業期間を利用するなどして調査日程の確保に努め、次年度も島根県立図書館寄託比布智神社春日家文書の調査・収集を継続して行う。また、手錢家蔵書、および広島県立歴史博物館寄託「管茶山関係資料」を対象として、島根県出雲市、広島県福山市での調査・収集を合わせて行う。関係学会・研究会などへの参加により情報収集を行うとともに、未だ不足している江戸期の全国的な歌壇・俳壇状況などについての先行研究調査のため、和歌・俳諧関係研究図書を購入する。
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