2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370259
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Research Institution | Shohoku College |
Principal Investigator |
伊藤 善隆 湘北短期大学, その他部局等, 准教授 (30287940)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近世文学 / 俳諧 |
Outline of Annual Research Achievements |
シンポジウム「藩主の交遊―和歌・俳諧がむすぶ人と地域―」(於:致道博物館 平成26年7月26日)の共同開催に参加し、「八戸藩主南部信房(畔李)の俳諧活動」を発表した。畔李の俳諧活動は、それまでの大名点取俳諧とは異なり、月次句合がその中心となる。当該発表は、その活動の特徴が、俳諧史上にどのように位置付けられるのか検討を加えたもので、シンポジウムが開催された東北地方に縁のあるテーマを取り上げたものである。また、同シンポジウムでは、研究協力者である稲葉有祐氏が、「備中松山藩主安藤冠里のサロン―「闘鶏句合」をめぐって―」を発表した。これは、江戸座俳人の祖として仰がれる其角の「闘鶏句合」の趣向を詳細に検討したもの。大名俳諧の始発点に位置する安藤冠里とその周辺の俳人たちの俳諧に関する研究である。 また、伊藤は、「俳諧史の中の出雲・大社・手錢家」として講演を行った(「特別企画展 江戸力 手錢家蔵書から見る出雲の文芸」連続講座第三回 於:手錢家和室・手錢記念館第一展示室 平成24年12月13日)。これは、島根県出雲市大社町の手錢記念館に所蔵される出雲地方の俳諧資料の検討を主とし、これまでの出雲俳諧史を検討しなおしたもの。同記念館には、俳人のネットワークを検討する上で貴重な資料となる伝書・一枚摺・俳書が所蔵されている。 なお、資料収集については、伝書類と、点取俳諧・月次俳諧に関わる俳書、俳人のネットワークが構築されていくことをよく示している近世後期の俳書、を主な対象として行った。公益財団法人柿衞文庫所蔵の点帖、天理図書館綿屋文庫所蔵の江戸座俳書の複写物等も収集することができた。資料の収集にあたっては、稲葉有祐氏の調査協力を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伝書については、手錢記念館所蔵の資料を中心に、伝書の調査・翻刻を実施することができた。併せて、関連する俳書の書誌調査についても適宜実施することができた。 点取俳諧については、大坂の点者たちに関する資料である、糸屋松生編『梅のしるべ』(文政11年刊)、梅左編『松のしをり』(天保9年刊)、梅左編『竹のしげり』(天保13年刊)、春秋園大年編『俳諧種瓢』(嘉永6年刊)、楓窓編『俳諧雪月花』(弘化4年刊)の各書を調査することができた。 俳人の手紙については、『俳諧文章車』(天保12年刊)の検討を始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
伝書については、さらに調査・翻刻を実施する必要がある。 点取俳諧については、「現在までの達成度」の項目に記した資料の内容を検討し、大坂の点者の変遷を明らかにする必要がある。また、江戸の点者たちについても、江戸座俳人や雪中庵系の俳人たちの伝記的事項を中心に調査をすすめる必要がある。 俳人の手紙については、『俳諧文章車』(天保12年刊)の検討をさらに進める必要がある。 上記の研究を進めるにあたっては、これまでと同様、資料の調査収集と読解を手段として、情報を蓄積していく。
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Causes of Carryover |
本研究では「俳諧点印データベース(仮称)」の作成を予定しており、その構築を専門の業者に依頼する予定である。本年度は、まだ業者に支払いが必要な段階まで作業が進展しなかったため、支払いが生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降、必要な段階で業者にデータベース作成を依頼する。その際、支払いが必要になった段階で、予算から支出することになる。
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