2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370259
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Research Institution | Shohoku College |
Principal Investigator |
伊藤 善隆 湘北短期大学, その他部局等, 教授 (30287940)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近世文学 / 俳諧 |
Outline of Annual Research Achievements |
島根県出雲市大社町の手錢記念館に所蔵される出雲地方の俳諧資料の検討を進め、「衝冠斎有秀追善集『追善華罌粟』―手錢記念館所蔵俳諧資料(五)―」(後掲)、「翻刻・手錢記念館所蔵俳諧伝書(三)―手錢記念館所蔵俳諧資料(六)―」(後掲)を発表した。前者は、出雲地方の俳人たちの交流の人的ネットワークを知る上で重要な資料の紹介。後者は、淡々の系統が出雲地方に入っていたことを具体的に示す『誹諧之伝系』、出雲地方に伝えられた去来系の伝書である『蕉門誹諧大意 ふもとの塵』、長崎の宇鹿の伝書である『俳諧十五篇』『俳諧発句十六篇』の紹介である。 また、複数の俳人たちによって制作された新出の俳画賛絵巻に検討を加え、「翻刻・影印『俚諺俳画賛絵巻』―仙鶴画、周竹・園女・秋色・敬雨ら賛―」(後掲)を発表した。同絵巻は、茶人としてもしられる仙鶴の画になり、同時代の俳人たちが賛を書いた作品である。同時期には絵俳書の刊行が流行するが、制作時期・制作者・内容のいずれから見ても、貴重な作品である。 さらに、新出の平砂の歳旦帖を「翻刻『寛延三庚午歳旦 新花』―寛延三年平砂歳旦―」(後掲)として紹介した。以上は、本科研の研究目的である俳人のネットワークや伝書の受容の様態の解明に重要な資料である。加えて、俳諧資料も含めた近世文芸資料を教材として用いることを提言した「教材としての近世文学の可能性―地域の文化を理解する手掛かりとして―」を発表した。 なお、資料の収集と研究の遂行にあたり、稲葉有祐氏の協力・助言を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伝書については、手錢記念館所蔵の資料を中心に、調査・翻刻を実施することができた。併せて、関連する俳書についても適宜調査を実施することができた。 俳人のネットワークについては、『誹諧之伝系』、『追善華罌粟』、『俚諺俳画賛絵巻』、『寛延三庚午歳旦 新花』の調査と資料紹介をすることができた。 また、点取俳諧については、松生(梅左)編『梅のしるべ』(文政11年)、梅左編『松のしをり』(天保9年)、梅左編『竹のしげり』(天保13年)、楓窓編『俳諧雪月花』(弘化4年)、大年編『俳諧種瓢』(嘉永6年)の各書の調査を進めた。 さらに、俳人の手紙については『俳諧文章車』(天保12年)に記載される俳人に関する調査を進めた.
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Strategy for Future Research Activity |
伝書については、引き続き、手錢記念館所蔵資料の検討を進めるとともに、他の地域や俳系の資料など、調査対象を広げて検討を進める必要がある。 点取俳諧については、大坂の点者の変遷を明らかにするため、『梅のしるべ』、『松のしをり』、『竹のしげり』、『俳諧雪月花』、『俳諧種瓢』に記載される俳人のデータを整理する必要がある。 俳人の手紙については、『俳諧手鑑 ふぐるま集』(『四時必要 俳諧文章車』)に記載される俳人の調査をさらに進める必要がある。
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Causes of Carryover |
本研究では「俳諧点印データベース(仮称)」の作成を予定しており、そのシステムの構築を専門の業者に依頼する予定である。本年度は、まだ業者に支払いが必要な段階まで作業が進展しなかったため、支払いが生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降、必要な段階で業者にデータベース作成を依頼する。その際、支払が必要になった段階で、予算から支出することになる。
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