2015 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮総督府発行教科書・教授書・編纂趣意書に見られる「同化思想」の形成について
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26370260
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Research Institution | Saga Women's Junior College |
Principal Investigator |
長澤 雅春 佐賀女子短期大学, その他部局等, 教授 (00310920)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朝鮮教育 / 植民地 / 国語 / 普通学校 / 国語読本 / 日韓併合 |
Outline of Annual Research Achievements |
朝鮮教育の基礎資料となる幾多の資料のなかから当該年度は『普通学校用仮名遣法・普通学校送仮名遣法』(大正2)を手引きとして併合前の大韓帝国学部編纂『日語読本』(全8巻 光武11~隆熙2)、『普通学校学徒用日語読本』(全8巻 光武11~隆熙2)と併合後の朝鮮教科書の1期となる『国語読本』(全8巻大正1~大正4)、Ⅱ期(第二朝鮮教育令後)『普通学校国語読本』(全8巻大正12~大正13)について調査した。『普通学校用仮名遣法・普通学校送仮名遣法』は、1910年(明治43年)の日韓併合を迎えて、それまでの大韓帝国期に使用していた日本語教科書ではとくに用語において不都合があるため、「国語」用に書き換える、あるいは教育上留意すべき点を指示して全国に配布したものである。これは、第1期「普通学校国語読本」の編纂発行までの急場をしのぐために重要なものであった。教材に使われる挿絵は、新たに朝鮮を主体としたものとなっているが、一部では日本の風俗を維持している。分かち書きは音節によるものではなく、植民地用に考えたものだろうが、その仕組みについてさらに考察の必要がある。他の資料として『国語教授法』(大正1)、『原稿教科書編纂の方針』(大正11)など多数あるが、当該年度は手を付けることはできなかった。 また、これまで韓国の図書館において収集してきた複写資料が劣化し、文字が消えつつあるため、随時PDFスキャンを行い、電子化作業を行った。そして当該年度も韓国国立中央図書館、高麗大学図書館、などにおいて、文芸誌やジャーナリズム、映画関連の資料収集を行った。とくにこれらは貴重なものであって、解放直後の文芸誌には日本人作家の諺文論文などが収録されており、こうした分野の解析も今後考察していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度及び前年度の課題を多く盛り込んだことにより、資料整理と分析、そして資料収集に手間と時間がかかっている。ただし、その資料収集では、当該年度では高麗大学、西河大学図書館において数多くの資料(日帝期、解放期、解放後の定期刊行物『国民文学』『野談』『半島の光』『女性』『国民新報』など)を入手することができた。そのため、これらの整理にたいへん手間取ることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
教科書を主体として解析・考察を行っているが、その分量は膨大である。しかしその発刊時期の教育雑誌たとえば『文教の朝鮮』『朝鮮』に掲載されている教科書編纂の思想などの対比が重要となっているため、これは前年度の課題でもあったが、さらに調査と収集を行いたい。
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Causes of Carryover |
昨年度は、韓国において韓国語図書を購入したが、日本国内で購入しようとしていた関連書籍を購入することができなかった。それは、韓国語書籍の読解に時間を多く費やしたためで、日本語書籍の購入するまでには至らなかったからである。そしてまた、國宮内での資料調査を予定していたが、韓国で多くの収集ができたため、その整理のために国内収集を行わなかったからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度では、日本語の図書購入ができなかかったため、これを行うこととする。
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Remarks |
「近代日本と韓国・朝鮮半島」は、日本近代文学および国語・日本語の領域から近代現代の韓国・朝鮮半島へとアプローチを試みるテキスト・サイトです。本サイトは、日帝統治時代の朝鮮総督府編纂発行教科書及び韓国内図書館所蔵の日帝期和書目録のテキスト化、そして20世紀前半期の朝鮮半島を背景とする日本文学及び日本語文学のテキスト化を主たる作業・公開目的としています。
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