2016 Fiscal Year Research-status Report
夏目漱石によるイギリス受容―小説理論の構築の一環として
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26370263
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
野網 摩利子 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (60586668)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 夏目漱石 / スコットランド文学 / 漢文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
スコットランドのハイランド地方を中心に調査を進め、漱石がなぜピトロクリに滞在することを決めたのかについて明らかにする研究を展開した。近辺のハイランド地方は歴史のある地域で、漱石滞在時にすでに考古学の対象となっていた。また、政府軍とジャコバイトとの紛争史においても着目すべき地なのである。漱石と直接接触した人物による著作、ならびに、漱石が生涯にわたって読んだことが確実な書物等を精読した結果、当該地方の地政学的な重要性を裏付けることができた。 この問題について漱石の読書との関連で公に発表したのが、ブルガリアのソフィア大学での講演「Histories, Ballads and Novels from the Perspective of Soseki's Association with R.L. Stevenson」、ならびに、イギリス・スコットランドのエディンバラ大学でのセミナー「Translation of Poems: Sir Walter Scott and Natsume Soseki」である。漱石の翻訳および創作との関連で公に発表したのが、オックスフォード大学で私が主宰したシンポジウムにおける私の発表「Making a Promise: The Impact of Old English Ballads and Romances on Soseki」である。 これまで古代スコットランド文学・文化にまで遡る漱石研究はなされてこなかったが、本研究により世界にその重要性を示すことができた。持続的に進めている漱石による漢籍利用の研究との両輪により、漱石の全体像にいっそう迫ることができたといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漱石による東西古代文化の受容を掲げた本研究において、その計画どおり、古代スコットランド文化が漱石に与えた影響について調査をなし、国際舞台で講演・発表を成し得たこと、また、漱石文学で使用された漢籍について単著を上梓できたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究をまとめた単行本をもう一冊予定しているため、漱石の読書過程をより正確に把握するために東北大学附属図書館漱石文庫で漱石の蔵書の書き込みの調査をする必要がある。また、漱石の友人であった狩野亨吉の蔵書も同狩野文庫に保管されており、今後、漱石による日本古典の受容の方面へも本研究の追求の手を伸ばすにあたり、調査は必須と考えている。
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Causes of Carryover |
スコットランドのハイランド地方調査の旅費を計上していたが、その調査を国際共同研究の基礎作業として位置づけたため、本研究においては必要書籍購入にのみ当資金を充てたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東北大学附属図書館漱石文庫および狩野文庫の調査旅費、ならびに、当該研究をまとめるにあたり必要な書籍の購入費として使用する。
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Research Products
(10 results)