2015 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代中期小説における中国文学の影響に関する研究
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26370265
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
井上 泰至 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 人文社会科学群, 教授 (90545790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木越 治 上智大学, 文学部, 教授 (10109093) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 上田秋成 / 雨月物語 / 白話小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
5月下旬、パリ国立図書館(リシュリー)に出張し、「今古奇観」の最善本を中心に調査した。同行した研究協力者は、上智大学大学院生の丸井貴史氏である。本書の調査の目的をパリ第7大学で丸井氏とともに報告し、本書の所蔵の位置づけについて意見交換を行った。また、昨年度調査した九州大学附属図書館所蔵の白話小説の必要箇所を複写した。これによって日本の近世小説に最も影響を与えた中国白話小説集「今古奇観」等の書誌に関する基本的なデータをかなり収集することができた。さらに、昨年度の調査結果と合わせ、日本近世小説に影響を与えた中国小説の本文・訓読・現代語訳を丸井氏に作成してもらい、井上はその日本近世小説への影響について、簡単な見通しを「上田秋成研究事典」(笠間書院、2016年1月)の各々「典拠作品の世界」「作品分析のためのマニュアル」「雨月物語あらすじ」の欄で紹介した。これによって、中国白話小説の影響が語彙やストーリーといった外面的な部分のみならず、その「語り」の方法や、「シーン」の編集にまで影響を及ぼしていたこと、上田秋成はそれをただ踏襲するだけでなく、自己の作品世界に定着させるべく、適宜改変を行っていた可能性があることが明らかになった。今後は、さらに細部にわたる白話小説の原本調査を行い確認をしながら、上田秋成が白話小説のどの手法を利用し、改変していったのか、について検討を行うべきであるという、最終年度の課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり、白話小説の書誌調査を終え、「雨月物語」への影響の新たな側面がうかびあがりつつある。ただし、白話小説の原本に当たっての細部にわたる調査を経た、より詳細な比較検討が課題として残っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
「雨月物語」における、中国白話小説の影響が語彙やストーリーといった外面的な部分のみならず、その「語り」の方法や、「シーン」の編集にまで影響を及ぼしていたこと、上田秋成はそれをただ踏襲するだけでなく、自己の作品世界に定着させるべく、適宜改変を行っていたことを、さらに細部にわたる白話小説の原本調査を行い確認をしながら、上田秋成が白話小説のどの手法を利用し、改変していったのか、について検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初予想していたよりも、文献複写の枚数が少なく、そのため機材(PC等)についても、従来あるもので間に合わせることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の結果、白話小説への原本にあたってのより詳細な調査が、近世小説への影響の質を解明することができることが明らかになったので、国内の所蔵先への再調査や、調査箇所を拡大した形で行う方法に変更するため、余剰分を主に旅費と、若干の資料複写に使用することにした。
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Research Products
(1 results)