2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Social and Political Issues of Brothers in British Drama in the Long Eighteenth Century
Project/Area Number |
26370266
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩田 美喜 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50361051)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イギリス文学 / アイルランド文学 / 演劇 / 表象文化 / 家族論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、〈長い18世紀〉の英国およびアイルランド演劇における兄弟表象を渉猟することで、同時期のエピステーメーの変化とその演劇との密接な関係を明らかにせんとするものであり、その性格上、個人研究としては広範な文献や上演資料に当たる必要がある。そのため、当該研究の初年度、2年目には、資料調査のために海外渡航をするなど、基礎研究に力を入れてきたが、研究の最終年度に当たる当該年度においては、研究成果を世に問うための執筆活動に力を入れた。 その最大の成果は、『兄弟喧嘩のイギリス・アイルランド演劇』(松柏社、2017)という単著の上梓にある。この書物においては研究の対象とする戯曲を中世から19世紀末にまで拡大し、かなり広い射程で兄弟表象を捉えているが、その根幹にあるのは「長い18世紀の時代に、兄弟喧嘩という伝統的なトポスに質的な変化が起こる分水嶺なのだ」ということであり、まさに本研究の実績が結実したものと言って良い。ルネサンス期に演劇のポピュラーなトポスとなる「兄弟と相続」の問題は、実は聖書にまで遡り得るほど古い主題である。だが、18世紀に、ブリテン帝国という新たしいナショナル・アイデンティティが、重商主義をその実践的イデオロギーとして英国に確立し、長子相続制度に基づいた土地中心の経済がもはや自明のものではなくなった時、演劇は時代とともに兄弟の表象を適合させていったのである。 なお、当該年度には、そのほかにも関連する英語論文を1本、日本語論文を3本発表しており、当該研究は充実した成果をあげられたと言えよう。
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Research Products
(8 results)