2014 Fiscal Year Research-status Report
メアリ・ウルストンクラフトに見られるピクチャレスク
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26370267
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石幡 直樹 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (30125497)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウルストンクラフト / ピクチャレスク |
Outline of Annual Research Achievements |
ウルストンクラフトの著作に見られる「ピクチャレスク」(picturesque)という当時流行した用語を検証し、自然美の発見と受容に彼女が果たした役割を解明し、自然美観照が彼女の進歩史観や女性解放の理念の形成にどのように寄与したのかを探った。 本年は、ウルストンクラフトが書いた『北欧紀行』と書評から彼女の捉えたピクチャレスクの意味について考察した。 人間は原初の自然状態において無垢で幸福であるというルソーの黄金時代の概念に反駁しながらも、ウルストンクラフトは自然のままの状態で暮らす人間の素朴な幸福に憧憬を抱いてもいる。第14の手紙では、「自主独立と美徳、悪徳なき豊かさ、心の堕落なき精神修養」と「ほほえみを絶やさぬ自由」が寄り添う黄金時代の生活を探したいと願う一方で、「人間は相変わらず弱さと愚かさの混じり合った存在」であると告げる理性の声を聞いて、人間は素朴で無垢な存在であるとするルソーの性善説を肯定することに迷いを示している。 ウルストンクラフトの葛藤は、「ピクチャレスク」という当時の流行語を用いて描いた自然描写からも読み取れる。彼女は『北欧紀行』において、道中目の当たりにした北欧の荘厳で荒涼とした大自然の様相を描写して、松と樅の木立ちが生み出す詩的な印象によって神秘的な畏敬の念に打たれ、樹木を哲学者になぞらえ、木陰に敬意を表して、それを「ピクチャレスク」と表現している。 これらの例から、彼女にとっての「ピクチャレスク」とは、単なる自然景観についての形容表現ではなく、人間観察や人間の思考の様相をも伝える役割を担っていたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度はウルストンクラフト、英国ロマン主義と自然観などに関連する資料を収集した。6月から7月にかけてスイスに出張して調査した資料をもとにして、ウルストンクラフト独自のピクチャレスクの観念に関する論考「ウルストンクラフトとピクチャレスク」を『国際文化研究科論集』(東北大学大学院国際文化研究科)第22号(2014年12月)に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、基本的に平成26年度の研究計画・方法を踏襲して、研究をさらに進展させる。ウルストンクラフト、ロマン主義時代思潮などに関連する図書・資料を購入して考察を加える。 平成26年度と同様に、関連著作や資料の分析と解釈が主な研究方法となる。著作と資料の分析以外にも、国内・国外に資料収集を目的とした出張を計画している。
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Causes of Carryover |
物品費で、購入したパソコンが予想より安価だったことと、人件費・謝金で資料整理に対する支払いを予定していたが、その必要がなくなったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度以降の研究において、出張費や物品費などで使用する計画である。
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