2015 Fiscal Year Research-status Report
イギリス・ロマン主義のグローバルな多様性――ヨーロッパを超えた継承と変容
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26370270
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
アルヴィ なほ子 (宮本なほ子) 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (20313174)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イギリス・ロマン主義 / イギリス・ロマン派詩人 / パーシィ・ビッシュ・シェリー / サミュエル・テイラー・コウルリッジ / ジェームズ・マンガン / 夏目漱石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀後半から19世紀前半の様々な「他文化」を国内外に抱え込んだイギリス・ロマン主義の文学が、他の地域の文化・文学に接触し、変容し、新しい形態を生み出す過程を、グローバリゼーションの一つの形態と捉え、文学空間の中で詩人(小説家)と後代の詩人(小説家)の関係において考察される「影響」の問題を、文学空間お外部へと開いて総合的に考察する試みである。 本年度は、昨年度の研究から新たに広がった視点として、2つの問題に焦点をあてた。1つは、イギリスの植民地政策が海外に進む前段階としてのインターナル・コロニアリズムに取り組み、イギリス・ロマン主義の時代からヴィクトリア朝にかけてのイギリス文学とアイルランド文学の複雑な交渉関係をイギリス・ロマン派詩人たちのロバート・エメットの処刑から受けた衝撃と影響、アイルランド詩人ジェームズ・マンガンへのイギリス・ロマン派詩人の影響の観点から考察した、もう1つは、イギリス・ロマン派詩人の明治時代の日本への影響を小説家になる以前の島崎藤村と夏目漱石の作品を中心に考察した。アイルランドは、漱石がイギリスに官費留学した際、ロンドン大学に最終的に落ち着く前に、ダブリンのトリニティ・カレッジの初代英文学教授エドワード・ダウデンに師事することを真剣に検討したことからもうかがわれるように、イギリス・ロマン主義の海外へ影響関係を考える際、ヨーロッパの内にありながらその外部であるような非常に重要な地政学的・文化的地点であることが確認された。 第一の点については、2015年10月にイギリス・ロマン派学会第41回全国大会シンポージアムで「1812年のアイルランド」としてその成果を一部口頭発表した。第二の点については、英語で論文をまとめ、イギリスのパルグレーヴ社から2016年度に出版予定であるロマン主義のアジア文学への影響に関する論文集に寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロマン主義の海外へ影響関係を考える際、アイルランドがヨーロッパの内にありながらその外部であるような非常に重要な地政学的・文化的地点であることが確認できたことと、イギリス・ロマン主義の日本への影響として、パーシィ・ビッシュ・シェリーの島崎藤村と夏目漱石への影響について英語での論文をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの領域にまたがって研究を進める。一つは、うちなる外部としてのアイルランドの位置づけについて確認できたので、さらなる外部としてのオセアニア地域に関する研究を進める。もう一つは、イギリスの植民地政策が及ばなかった地域である日本に関して、今年度の研究をさらに深める方向で研究を進める
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