2016 Fiscal Year Research-status Report
イギリス文学における国家意識構築と宗教的主題の関連研究
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26370281
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
園井 千音 大分大学, 理工学部, 准教授 (70295286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園井 英秀 九州大学, 人文科学研究院, 名誉教授 (00069709)
平田 耕一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20274558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 英文学 / 西洋史 / 西洋思想史 / 西洋宗教史 / 西洋科学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は18世紀から20世紀までのイギリス文学における国家意識構築と宗教的主題との関連を検証し、その特質を定義するために、文学的記述とイギリス社会的思想的資料分析を行い、イギリス国家意識構築とイギリス文学の思想的特質の関係を明らかにするものである。イギリス文学における宗教的主題の変容とイギリス国家意識の関連を(科学及び社会変革と宗教思想の関連、教養文化の発達などの関連を中心に)検証した。 本年度の分析対象は、特に、(イ)ロバート・サウジーなどロマン派文学と19世紀イギリス文学、ジョージ・エリオット、マシュー・アーノルドとの思想的関連を宗教的主題とイギリス国家意識の関連の解釈を中心に社会的及び政治的資料の分析を通して行い、イギリス社会思想における宗教的影響力とイギリス国家意識の関係の一部を明らかにした。前年度までの18世紀文学との分析結果との関連において文学的主題と宗教思想の変容について通事的分析を行なった。(ロ)C.ダーウィンの進化論思想の流布に関してヘンリー・ドラモンド、アーサー・ジェイムズ・バルフォア、ベンジャミン・キッドなどの進化論に関連する書籍の流布とイギリス社会における伝統的宗教観と懐疑との相克を検証し、イギリス社会における国民意識形成と宗教的思想の関連を分析した。(ハ)19世紀末から20世紀初頭イギリス文学における宗教的主題の揺れをトマス・ハーディーを中心に分析し、イギリス文学の宗教的特質と国家意識構築の関係の一部を明らかにした。 なお、上記の文学と思想関連分析に関して、ド・モンフォール大学Professor Tim Fulford, 園井英秀九州大学名誉教授、イギリス社会と科学思想の関連資料分析に関して平田耕一九州工業大学教授の研究協力を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は前年度までの分析結果を踏まえ、18世紀末から20世紀初頭までのイギリス文学とイギリス社会思想の宗教的要素とイギリス国家意識構築の関係を検証した。具体的には以下の課題を中心に研究分析を行い、文学と思想関連分析においては園井英秀九州大学名誉教授、ド・モンフォール大学Professor Tim Fulford,科学思想の関連資料分析に関して、平田耕一九州工業大学教授の研究協力を得た。(イ)サウジーの1800年代の文学作品とイギリス出版批評業界(フランシス・ジェフリーなどを中心に)との関連における思想的特徴と国家意識構築の関連、また対仏戦争などの終結と19世紀イギリス社会の発展における宗教的思想との関連をジョージ・エリオット、マシュー・アーノルドの思想的関連において分析した。(ロ)ダーウィンの進化論思想のイギリス社会への浸透について、ブリッジウォーター論文集、Bookman、Review of Reviews を中心とした分析により検証し、科学思想とイギリス国民思想との関連を考察した。(ハ)19世紀末の宗教的懐疑思想と20世紀初頭のイギリス文学の宗教的主題との関連をハーディーの詩作を中心に検証し、存在論的思想とイギリス社会の関連の一部を明らかにした。 以上の分析研究は、国内大学図書館で行った。また本領域に関する国内の学会に出席した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究最終年度であったが、研究の遂行上、特にイギリス文学の宗教的特質について18世紀イギリス文学の宗教思想的のより詳細な分析が必要であること、また19世紀末から20世紀にかけての懐疑主義思想の分析の拡充が必要であることが判明したので研究期間を次年度(平成29年度)まで延長した。具体的には(イ)18世紀英文学とイギリス社会思想との関連をより広範囲の資料分析により検証する。(ロ)19世紀末から20世紀イギリス文学における懐疑思想の根源的分析。(ハ) 20世紀初頭ジョージ王朝詩から、戦争詩文学、及び1940年代におけるイギリス文学低迷期の基本的性質を再検討し、モダニズムと反モダニズムの思想の流れを検証し、これまでの研究を総括する。 本研究の結果、イギリスの国民意識の基盤の特質、例えば、自由意思、自己発見、懐疑精神などの存在とその独自の思想的要素の形成に関する研究がさらに必要であることがわかった。これからの研究において特にイギリス国民が宗教的思想的変革を経験する1640年代の市民革命期から人間の基本的感情に対する関心や自由の権利の確立が思想的焦点となる1770年代のロマン主義思想の時代においてその基盤が形成されたことを証明予定である。 『イギリス文学における国家意識構築と宗教的主題の研究』において研究結果をまとめ、発表する予定である。また関連領域における国内及びイギリスにおける学会出席を予定する。上記(イ)~(ハ)研究に必要な18世紀~20世紀イギリス文学関連資料の分析拡充のため、研究費(旅費、物品費、謝金、その他)を繰り越す。
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Causes of Carryover |
研究の遂行上、本年度までの研究分析により特にイギリス文学の宗教的特質について18世紀イギリス文学の宗教思想的のより詳細な分析が必要であること、また19世紀末から20世紀にかけての懐疑主義思想に関する資料分析の拡充が必要であることが判明したので研究期間を研究分担者と検証の方向性を確認後、次年度(平成29年度)まで延長した。 上記(イ)~(ハ)に関する研究に必要な18世紀~20世紀イギリス文学関連資料分析拡充のため、研究費(旅費、物品費、謝金、その他)を繰り越す。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由に従い、18世紀~20世紀イギリス文学と宗教的主題についての拡充的分析を行い、総合的にイギリス国家意識形成との関連についてこれまでの研究結果をまとめる。国内及びイギリスにおける本研究に関する学会参加、論文発表、及び大学図書館等における資料収集分析を効果的に行う。そのための研究費(旅費、物品費、謝金、その他)を繰り越し、研究を実行する。
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Research Products
(2 results)