2014 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア朝文学文化に対する写真術の影響に関する研究
Project/Area Number |
26370285
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
吉本 和弘 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (90210773)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ヴィクトリア朝期の写真術 / アーサー・マンビー / ルイス・キャロル / ジュリア・マーガレット・キャメロン / ラファエル前派 / 他者の表象 / 英国 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画どおり平成26年度はイギリスに存在する研究資料の調査を行った。9月15日から23日までの間に、ブラッドフォードのメディア博物館でヴィクトリア朝写真のコレクションを調査、ケンブリッジ大学のレン・ライブラリーでアーサーマンビーの写真コレクションを調査、オックスフォード大学のクライストチャーチ図書館でルイス・キャロルの写真等を調査、ワイト島フレッシュウォーターのジュリア・マーガレット・キャメロンの写真博物館を調査、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーの資料を調査した。また10月2日に、イギリスのルイス・キャロル協会の年次大会に参加した。これらの調査結果と、これまでに蓄積して来た研究結果をまとめて、本研究の重要な部分となるアーサー・マンビーの女性労働者の写真コレクションに関する研究書(単著)を3月末に出版することができた。タイトルは『美しき汚れ:アーサー・マンビーとヴィクトリア朝期女性労働者の表象』(春風社)である。この著書において、マンビーの写真コレクションについて紹介すると共に、マンビーが写し取ろうとした当時の階級意識やジェンダーに対する意識とヴィクトリア朝社会の「他者」表象に写真が果たした役割についてのこれまでの考察を世に問うことができると考えている。今後は、今回の資料調査で入手した他の写真家たちの写真コレクション、キャロルやキャメロン、そしてレイランダーなどの写真家について、その特徴をまとめ、ヴィクトリア朝期の美術運動であるラファエル前派の絵画などとの影響関係について考察を進め、ヴィクトリア朝期の写真に関する総合的な著書へと結実させる計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に3人のヴィクトリア朝期の写真家について研究し考察を論文化する予定だが、アーサー・マンビーについては一旦著書という形にまとめることができた。マンビーについては資料がケンブリッジにすべて保管されているので、一度の訪問である程度全体的な調査をする事ができた。他の写真家については、作品がイギリスとアメリカの多くの場所に分散しているので、アメリカについての調査を27年度にできるだけ行うことができれば、次の段階へ進むことができると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に、アメリカに存在するルイス・キャロルやキャメロン、レイランダーらの写真について調査を行いたいと考えている。2015年はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』出版150周年にあたり、世界各地で様々なイベントが予定されているが、テキサス大学オースチン校のキャロルのコレクションの展覧会も企画され、イギリスのケンブリッジでは研究学会も企画されている。これらに参加して研究の動向を学びたい。また一方で、絵画と写真の影響関係に関する議論についての理解を深め、資料に対する分析能力を高めてゆきたいと考えている。
|