2016 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア朝文学文化に対する写真術の影響に関する研究
Project/Area Number |
26370285
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
吉本 和弘 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (90210773)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 写真と文学 / ヴィクトリア朝 / ルイス・キャロル / ジュリア・マーガレット・キャメロン / アーサー・マンビー / ラファエル前派 / 写真と絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年3月春風社より、それまでのマンビーに関する研究を単著『美しき汚れ:アーサー・マンビーとヴィクトリア朝期女性労働者の表象』として出版した。これは、19世紀後半のロンドンに住んでいた弁護士にして詩人のアーサー・マンビーと、最下層の雑役女中ハナ・カルウィックの階級を超えた愛情関係を巡って、ヴィクトリア朝期のイギリス社会の道徳観、ジェンダー観、階級意識、イデオロギーについて考察しながら、特にマンビーが収集した女性労働者の写真コレクションについて分析し考察した論考である。 2016年11月26日には、日本ヴィクトリア朝文化研究学会の研究大会にて「ジュリア・マーガレット・キャメロンの写真とラファエル前派主義」と題して研究発表を行った。技術的にも発展途上で、芸術としての地位を認められていなかった写真術はラファエル前派のナラティブ・ペインティングの要素を導入あるいは模倣して、画面に物語の演出を施す方向に向かった。このような写真と絵画との相関関係を中心に考察した。 2016年10月29日には、日本ルイス・キャロル協会第22回大会にて「ルイス・キャロルの写真アルバム A [VI] を読む」と題して研究発表を行った。2016年3月にテキサス大学オースチン校にあるハリー・ランサム・センター所蔵のヘルムート・ガーシュハイム・コレクションの調査を行い、これをもとに、ルイス・キャロルの作成したA[VI] のアルバムについての所見を発表したものである。主にアルバムに含まれる絵画の写真の存在意義や写真に対する意識を中心に考察した。この発表の内容は、平成28年度県立広島大学・人間文化学部紀要に「ルイス・キャロルの写真アルバムA [VI]に見る写真と絵画の影響関係」として発表した。 これらの研究発表の内容を含め、今後の成果を今後総合的な研究書としてまとめてゆく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、平成28年度中に主立った資料の調査を終えて、その成果を論文または著書の形でまとめたいと考えていたが、最終年度の資料調査の時期が、学会参加と合わせるためなどの理由で遅れたこともあり全体の進捗が若干遅れている。また調査する過程で、さらに別の場所にも資料があることが判明して来て、出来ればそれらも調査したいと考えている。ゆえに本研究の1年の研究期間の延長を申請した。この申請は受理された。費用や調査を行うための日程の関係で希望する全ての資料を調査するには至っていないが、これまでの調査を元にして研究成果をまとめてゆく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集したアーサー・マンビー、ルイス・キャロル、ジュリア・マーガレット・キャメロン、そしてその他の主要なヴィクトリア朝期の写真家(オスカー・グスタフ・レイランダーやヘンリー・ピーチ・ロビンソンら)の作品のデジタル画像を綿密に調べて、さらにファラエル前派の絵画作品との影響関係について考察を進め、テーマごとに、研究発表を行うか、論文としてまとめてゆく。しかし、キャロルやキャメロン、その他の写真家についてはさらに資料が別の箇所にも多数あることが判明して来たので、可能な限りそれらを調査しに行きたいと考えている。そのための研究補助を受けるための申請をさらに提出したいと考えている。 マンビーに関しては一応まとめることが出来たが、キャロルとキャメロンに関してはさらに論文を書きためて、それらを編集して最終的には単著としてまとめ、世に問いたいと考えている。
|